契約先は多岐にわたり契約内容も複雑。技術情報など機密性の高い情報の漏洩対策に課題
京都フュージョニアリング様の法務部門における体制について教えていただけますか。

津村:
会社規模は150名程度で、契約法務は2名、知財管理は2名、機関法務を含むガバナンスは3名で運営しています。管理はワンチーム体制で、世界各国の契約業務をすべて日本で管理しています。
事業の特性から、契約先も内容も多岐にわたると伺っています。
津村:
はい。法務部門の業務自体は一般的で、契約書の審査や事業部からの相談への対応が主なのですが、事業としてはビジネスと研究開発の2つの面があるため、契約書の種類は多いです。相手先としては、まずソリューションを提供する顧客、これはすべて海外の企業・機関です。そして私たちは自社で生産設備を持たず製造委託するファブレス企業で、主に国内ですがサプライヤーとの契約もあります。さらに共同研究も行っているため、共同研究先と知財の取り扱いを含めた契約の締結も必要です。
それぞれに合意事項も細かく異なり、言ってみれば毎回一点ものを売っているようなものです。「利用規約があってそれに合意すればOK」というわけにはいかないため、契約関連業務は非常に複雑です。
MNTSQ導入前の課題を教えてください。
津村:
情報管理と契約ライフサイクルの2点で課題がありました。まず情報管理の課題ですが、MNTSQ導入前は、他社の契約管理ツールを使いながら、契約の相談や案件チェックについては社内チャットツールで行っていました。これでは情報をクローズドにしておくことは難しく、情報漏洩のリスクをはらんだ状態になっていることを問題視していたのです。閲覧制限を整理したうえで、一つのプラットフォームで管理できるよう切り替えたいと考えていました。
一般的にスタートアップでは、DXに予算をあまり割けないケースが多いように見受けられます。御社でリーガルテックの整備を重視されるのにはどんな背景があるのでしょうか。
津村:
会社としてガバナンスを重視しているのが前提にあります。加えて先ほどお話ししたように、当社では契約の種類が多岐にわたるうえ、先端技術など機密性の高い情報が契約書の随所に含まれています。契約書の内容ももちろんですが、情報漏洩のリスクも考慮し、管理を強化しなければならないという背景がありました。
情報漏洩リスクへの対応も、リーガルテックを導入する重要な目的の一つだったのですね。続いて、2点目の契約ライフサイクルについてはいかがでしょうか。
津村:
契約管理ツールの利用が出口の契約書管理だけにとどまり、契約相談の受付、ドラフト作成、審査など、締結までのフェーズではチャットツールやメールをベースに進めるのが常態となっていたのを改めたいと考えていました。入口から出口、その後の管理まで一気通貫で行いたいという業務効率化のニーズから、包括的なリーガルテック導入の検討を始めました。
ワンデータベース、ワンプラットフォームで契約管理ができるMNTSQに移行

津村:
もともと、契約審査担当の圓尾が前職の頃から、他社でMNTSQが導入されているのを見知っていたのです。周囲で導入企業も多く、信頼できる一候補としてMNTSQは挙がっていました。
何社か機能を比較検討した結果、契約管理の入口から出口までワンプラットフォームで管理ができるMNTSQが、私たちのニーズに対する最適解だと判断しました。他社でも複数の機能を連携する動きはあるようですが、最初から一つのデータベースで設計されているMNTSQの方が、安心して管理できると感じました。
長島・大野・常松法律事務所という、日本有数のローファームが監修したテンプレートが用意されている点も評価しています。
MNTSQ導入の際は、チームの皆さまが使いやすいようご自身で調整してくださるなど、スムーズに進めていただきました。一方で導入にあたり、社内で苦労された点もありましたか。
津村:
全体の設計や意思決定の部分は、MNTSQさんと一緒に取り組んでスムーズに進めることができました。苦労した点としては、最終的に約1,000件のデータ移行に想定以上に時間がかかったことでしょうか。
データ移行の具体的な作業としてはどのように進めていったのですか。
津村:
3〜4か月かけて一件一件、見ていきました。稟議が通った契約書なのかどうか、どのフォルダに分けて誰の管理にすべきなのか。閲覧制限も付けているので、ここをよく考えないとオペレーション上問題が生じてしまいます。間違いなく整理するには、結局目視で確認するしかなかったですね。
閲覧権限を設けることは、これまで閲覧できていたものにアクセスできなくなるという制約にもなりますが、それによって「この案件の担当はこの部署、このメンバー」と、担当領域を明確にする副次的な効果も生まれました。これまで社内的には一部曖昧な状態で進行していた役割分担を整理する意味でも、この作業には意義があったと感じています。
MNTSQ導入に伴い、契約関連のオペレーションが変更になることで、事業部門のメンバーにも影響はおよびます。社内での移行はスムーズに受け入れられましたか。
津村:
これまでは契約関連の業務はすべて法務部門で管理していました。MNTSQ導入後は、閲覧権限を付与して、事業部門の各担当者が管理する体制に変わっています。事業部門からすると、これまで法務部門がやっていたことを自分たちが引き受けることになったわけです。手間は増えますが、半面、自分たちで管理できるようにもなり、フレキシブルに業務を進められるようになっています。デメリットだけでなくメリットもありますから、そこは抵抗なく受け入れられていますね。
MNTSQはUIもわかりやすいですし、私たちも事業部門のメンバーにも安心して使ってもらえるプラットフォームを用意できたと考えています。
課題だったガバナンス・リスク管理は解決。効率化されたプラットフォーム導入で事業部門への業務移行に成功、法務業務はあるべき形に
MNTSQの導入によって実現したこと、得られた成果について教えてください。
津村:
チャットツールでの契約関連業務のやり取りはもともと解消したいと考えていた課題ですが、これがなくなったことで、業務の無駄も解消されたと感じています。今まではチャットツールにメッセージが入ってきたら、その時点で自分に関係する可能性を判断できず、すべてに目を通していました。今はレビュアーや案件管理担当者など、役割に従って閲覧権限を設けているため、メッセージは自動的に振り分けられて必要な担当者が確認できるようになっています。これでずいぶん効率化しましたね。
業務にまつわる機能についてはもちろん満足していますが、ほかに挙げるとすると、MNTSQ内に毎月届く、長島・大野・常松法律事務所のニュースレターがすごくありがたいですね。
最後に、MNTSQ導入によって生じたポジティブな変化について教えてください。
津村:
法務部門では、MNTSQのプロセスできちんと業務が整理され、業務分掌が進んだことで、より業務が効率化したと感じています。各担当はMNTSQの中で業務が完結でき、私は必要なタイミングで承認をし、問題が起きたときに対応をすればよいという流れに変わりました。
全社的に見れば、一つのプラットフォームで、テンプレート管理を適切な閲覧権限のもとで行うことができ、一気通貫で契約締結まで完了した後は、データがフォルダに入って事業部門が管理することができるようになりました。ガバナンス・リスク管理の観点でも安心感がありますし、本来事業部門で行うべき業務で法務部が引き受けていたものは事業部門が自分たちで行うことができるようになりました。MNTSQ導入によって、契約関連業務があるべき形に整ったと感じています。
京都フュージョニアリング株式会社様、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。