リーガルテックで変わるメガバンクの契約管理:法務部とデジタル戦略統括部の協働効果とは
株式会社三菱UFJ銀行
・LIBOR(ライボー)廃止を機に契約の締結〜管理体制を見直し
・過去の法律相談データの検索性が不十分だった
・電子帳簿保存法に則った管理が容易になり、作業負荷を軽減
・23,000件の法務相談データを移行し、検索性が大幅に向上
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下であり、日本における三大メガバンクの一角を占める株式会社三菱UFJ銀行。2024年3月末時点で国内に421、海外に104の支店を保有し国内外で広く事業を展開しています。 金融業界ではいち早くDXに参入し、「世界が進むチカラになる。」をスローガンに、2021年度から2023年度にかけて掲げた中期計画でDXを重要戦略として策定。オープンイノベーション施策を始め大胆に企業変革を遂行してきました。
2024年にはデジタル戦略統括部を新設し、社内業務のDXにも継続して、注力しています。その流れのなか、デジタル戦略統括部主導で法務部・総務部と協働しMNTSQを導入。契約周りの業務効率化に成功しました。
今回はデジタル戦略統括部と法務部それぞれお二人ずつにご参加いただき、導入前の課題から導入後の変化についてお話を伺いました。
<参加者>
デジタル戦略統括部AI・データ推進Gr/調査役 福山 明子様
デジタル戦略統括部AI・データ推進Gr 石井 千星様
法務部企画Gr/上席調査役 鈴木 祐司様
法務部企画Gr/調査役 藤原 晴也様
※以下、敬称略
※2024年8月時点での役職です
社内DXを本格的に開始。まずは法務周りの整備から着手
- まずは、皆様が所属されている部署の構成と役割について教えていただけますか。
福山:
私と石井が所属しているのはコーポレートセンター配下のデジタル戦略統括部のAI・データ推進グループで、名前の通りAI活用を推進していくことをミッションに掲げています。複数部署が一緒になり、2024年4月にデジタル戦略統括部として新設され、現在約150名が所属しており全社内のDX推進をサポートしています。法務領域のDX推進も私たちの役割に含まれており、リーガルテックのツール選定から導入までを推進しました。
鈴木:
私と藤原はコーポレートセンター配下の法務部のメンバーで、グローバル全体で400名在籍している部署です。東京本部には約35名おり、法曹資格を持っているものも約20名ほど在籍しています。主な業務は行内の各部店からの法務関連の相談、契約書の審査、訴訟対応、グループのガバナンス体制構築などを担当しています。
- 法務関連の相談と審査を主に担当されているということですが、その後の工程の契約締結から契約書管理は別の部門が担当されているのでしょうか。
藤原:
そうですね。当行の場合規模が大きく、全事業の契約書をすべて法務部で審査することは現実的ではないため、全契約書を審査しているわけではありません。契約締結関連のチェックリストを共有しているのと、事業部ごとにナレッジも蓄積されていたので、締結後の管理については各事業部が担っていました。
- 今回、MNTSQを導入するに至った背景を教えていただけますか。
福山:
大きなきっかけのひとつに、LIBOR(London Interbank Offered Rate、ロンドン銀行間取引金利)の廃止があります。
鈴木:
LIBORとはロンドンのインターバンク市場で提示される指標金利のことです。当行を含む多くの金融機関では、グローバルベースの貸出契約やデリバティブ契約の多くでLIBORを基準金利として定めていましたが、2021年から2023年にかけて廃止されました。
福山:
LIBOR廃止を契機に、影響のある契約の調査をグローバルベースで実施したのですが、契約書が散在していて、とても負荷がかかりました。当時、電子契約導入を先行して進めていたこともあり、紙ベースの契約から電子契約・電子管理への移行が必要だと考えました。「契約業務を電子化し管理しやすくする」に加え、「契約内容の交渉・締結・締結後までのサイクルを効率化する」という手段がないかと、リーガルテック関連ツールの選定が始まりました。
MNTSQがデジタル戦略統括部・法務部双方の課題解決手段に
- リーガルテックツールを選定する際は、どのように要件定義をされましたか。
石井:
必須項目としていたのは以下の2点です。
・電子帳簿保存法に対応したデータ保管が可能
・DocuSign(電子署名・電子契約サービス)とのAPI連携が可能
これらを基準に複数のツールを選定し、最終的にMNTSQに決定しました。
- MNTSQ導入の決め手になったのはどの点でしたか?
石井:
一番の決め手は、DocuSignとのAPI連携が可能だった点ですね。そして契約書の分析の精度も、当行が求める要件に沿っていました。
- デジタル戦略統括部主導で検討されたMNTSQの導入ですが、法務部としてはお話を聞いてどのような印象を持たれましたか?
鈴木:
法務部としても、ぜひ導入してみたいとポジティブに受け取りました。法務部内にも、「法律相談に対する回答の品質やスピードの向上」「回答内容の一貫性を保てる環境の構築」など業務を遂行するうえで改善したい点がありました。
藤原:
法務部へは年間約2,000件の法律相談が寄せられており、年々増加傾向にあります。
これまでは、過去の法律相談のデータは社内のイントラネットにファイルをアップロードして蓄積していたのですが、検索性が不十分で単純なキーワードでしか検索できませんでした。検索しても関連する法律相談が出てこなかった案件で回答に迷った場合は、長く在籍しているメンバーに相談するしかありませんでした。そのため、データ化して一元管理し、部内の共通ナレッジとして活用したいという構想はありました。
鈴木:
とはいえ、法務部内で業務改善プロジェクトを発足するには至っていなかったのですが、今回デジタル戦略統括部からMNTSQを紹介され、法務部内での構想も同時に叶えられそうだと思いました。
また、私たちの保管する情報はセンシティブなものが多く、セキュリティ要件も厳しく見る必要があるのですが、デジタル戦略統括部によるセキュリティ基盤の確認も済んでいたため、法務部への導入検討はスピーディに進められましたね。
シングルサインオンでログインを可能にして社内利用を推進
- それぞれの部門でどのように導入プロジェクトを推進されていったのでしょうか。
石井:
全行展開する前に、総務部、法務部、デジタル戦略統括部など、電子契約締結の多い部署に試行してもらいながらマニュアルを作り、全行導入に繋げていきました。
導入時には部内説明会を実施し、従来フローからの変更点などをデモを交えて紹介しました。
藤原:
法務部のメンバーは、マニュアルを見ただけでスムーズに利用できていました。特に勉強会や研修なしで使えているのは、MNTSQの使いやすさのおかげだと思います。
福山:
試行時はMNTSQに個別にログインして利用していましたが、全行展開に際し、個別ログインなしで、行内の1つのシステムとして利用できる環境が必要でした。そのため、すぐにアクセスできるよう、シングルサインオンでログインできる仕様にしました。
藤原:
都度ログイン作業をしないで済む仕様を検討してもらえたのは、法務部としてもとても助かりました。おそらく、法務部が独自で導入を推進した場合、シングルサインオンなど、導入時に検討しなければいけない要件の定義や対応は難しかったと思います。デジタル戦略統括部が主導してくれていたからこそ、今回のMNTSQ導入が実現できたと思っています。
個人負荷のかかる業務の削減、ナレッジ管理・活用により、当初の課題はほぼ解決できている状態に
- MNTSQを導入、運用されてみて、どのような変化を感じているでしょうか。
石井:
デジタル戦略統括部としては、業務負荷がかなり軽減されたと感じています。これまでは、電子帳簿保存法に従い所定の項目での検索性を担保するために、エクセルで電子契約管理表を作成し、締結済の電子ファイルを専用のフォルダと紐づけて保存・管理していました。
DocuSignで締結した契約書を手元にダウンロードし、 フォルダへ手動でアップロードするフローは、個人単位での契約管理業務の負荷を増加させ、契約管理業務の非効率化が目立っていました。
MNTSQ導入後は、契約書から必要項目を自動読み取り・検索・抽出可能とするソリューションにより、電子帳簿保存法に沿った項目を抽出するのが容易になりました。DocuSignとの連携のおかげで、電子契約データの保管の手間が削減され、契約管理業務の効率化が実現できました。
現在では、電子契約を前提とした行内業務フローの策定ができ、行内におけるLegal Techの敷居が下がっていることを実感しています。
鈴木:
法務部でも、これまで法務部内で蓄積されていたデータ約23,000件をMNTSQに移行したおかげで、以前に比べて格段に検索性が向上し、業務効率化につながっています。現在はMNTSQの利用が業務フローとして定着しており、法律相談がきたらMNTSQで、過去の類似案件の有無を検索して、回答が終わったらしたらMNTSQにアーカイブするという運用ができています。
生成AIの組み込みをはじめ、より高度な活用を目指す
- 各所で活用いただきありがとうございます。最後に、MNTSQを今後どのように活用していきたいか、両部署の展望を教えてください。
福山:
業務効率化は実現できたので、今度は高度化にチャレンジしたいですね。私たちの部署が社内におけるAI活用の推進をミッションにしているということもあり、ぜひAIを組み込んでいきたいですね。たとえば生成AIによる自動レビュー機能など、テクノロジーを駆使して蓄積した契約データをより広範囲で活用できる基盤構築に挑みたいと考えています。
藤原:
法務部としては、もとより目指していたナレッジの検索性向上は既に実現できているので、他の観点で法務の生産性向上に繋がるような活用方法がないか日々模索中です。
鈴木:
生成AIの活用は、法務部としても目指したいところです。
株式会社三菱UFJ銀行の皆様、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
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