古い契約書のひな形を使い続ける危険性を解説
古い契約書のひな形を使い続けると、法改正へ対応できず、取引実態とのズレが生じ、自社に不利な契約となる危険があります。ここではそのリスクを解説します。
最新の法改正に対応できていない条項が違法・無効になる
近年、フリーランス新法や取適法など、契約に関わる重要な法改正がありました。古いひな形のままでは、最新の法律と合わない条文が残っていることがあります。
たとえば、新しい規制を反映していない記載は、法令違反として行政指導の対象になる可能性があります。また、法律に反して条項そのものが無効と判断されることもあり、いざという時に自社を守れず、契約の前提が崩れてしまう恐れがあります。
実際の取引内容と合わず自社が不利になる
ひな形を作成した当時は自社の取引の実情に合っていても、事業内容や業務フローは時間とともに変化していくものです。古いひな形をアップデートせずに使い続けると、現在の実際の業務内容と契約書の条文が一致しなくなることもあるでしょう。その結果、責任の範囲が広がりすぎたり、条件が不明確になったりして、トラブル発生時に自社に不利な解釈をされるリスクが高まります。
古い契約書のひな形におけるリスク
古い契約書には、法改正への未対応だけでなく、条文の曖昧さや時代に合わない内容が含まれていることがあります。以下に特に注意すべき具体例を紹介します。ひな形を使う際は必ず把握しておきましょう。
「瑕疵担保責任」の記載は契約不適合責任へ改定が必要
かつて使われていた「瑕疵担保責任」という言葉は、民法改正により「契約不適合責任」という概念に整理されました。内容も単なる言い換えではなく、追完請求や代金減額など、請求できる内容が明文化されています。
古い表現のままでも契約として機能することはありますが、いざという時に当事者間で解釈が分かれる可能性もあります。不要なトラブルを防ぐためにも、最新の制度に合わせて条文を見直しておくとよいでしょう。
損害賠償の範囲や上限が曖昧に書かれている
昔から使われているひな形には、損害賠償について「一切の損害を賠償する」と上限を設けずに書かれているケースが少なくありません。かつてはそのような記載でも通用しましたが、そのまま使い続けるのは大変危険です。
間接損害まで含むのか、上限はいくらなのかが明確でなければ、予想外の高額請求を受ける恐れがあります。現代の取引実務に合わせて、具体的な上限金額や対象範囲を限定しておくことが企業を守るポイントです。
遅延損害金の利率が旧法のまま放置されている
遅延損害金の基準となる法定利率も、民法改正で変更されています。以前の年5%(固定)から、現在は年3%を基準とする変動制に変わりました。最新の国の告示により、少なくとも2029年(令和11年)3月末までは、この年3%の利率が維持されることが確定しています。
古い契約書に旧利率(年5%など)がそのまま残っていると、この確定した法律とズレが生じます。取引先とのトラブルを避けるためにも、利率の記載は必ず確認しましょう。
個人情報保護法(2022年・2023年改正等)や、実務上の標準となっている最新の反社条項の基準に適していない
近年、個人情報保護法は度々改正され、反社会的勢力排除の取り組みも社会的に強化されています。古いひな形では、こうした現代的なリスクに対応する条項がなかったり、内容が不十分だったりすることがあります。情報漏えいや不適切な取引が起きた場合、企業の信用問題に直結します。現代のコンプライアンス基準に合った条文へ更新することが欠かせません。
契約書を見直す際にチェックすべき法務ポイント
契約書を更新する際は、重要な条文を1一つひとつ確認することが必要です。ここでは、特に見落としやすいポイントを整理します。
用語の定義と適用範囲を明確に定めておく
契約書に登場する「本サービス」「成果物」「機密情報」などの用語は、定義が曖昧だと解釈の違いから争いにつながることがあります。誰が読んでも同じ理解になるよう、冒頭で定義を明確にし、その言葉がどの範囲まで適用されるのか具体的に定めておくことが重要です。
契約解除・中途解約の条件とルールを見直す
契約を終了させる条件が曖昧だと、いざというときに解約できず、大きな損失につながる恐れがあります。どのような場合に解除できるのか、事前の催告は必要か、何日前までにどの方法で通知するのかなどを具体的に定めておきましょう。また、中途解約時の精算方法や違約金の有無も明確にしておくことが重要です。
知的財産権の帰属(自社か顧客か)を確認する
業務委託や制作契約では、成果物から生じる著作権や特許権といった知的財産権が誰に帰属するのかを明確にする必要があります。記載が不十分な場合、想定していた利用ができなくなる可能性があります。自社が二次利用できるのか、顧客に独占的に帰属するのかなど、将来のビジネス展開を見据えて確認しましょう。
秘密保持義務の範囲と例外規定を精査する
秘密保持条項では、どの情報が秘密情報にあたるのかを具体的に定めることが大切です。口頭で開示された情報を含むのか、公知情報やすでに保有している情報は除外されるのかなど、例外規定も整理しておきましょう。範囲が広すぎても狭すぎてもトラブルの原因になります。
自動更新条項と更新拒絶の通知期限を確認する
自動更新条項がある契約では、更新を止めるための通知期限を過ぎると契約が自動的に延長されます。「何日前までに通知が必要か」「その通知方法は何か」を明確に確認しましょう。社内で期限を管理できる体制を整えておくことも重要です。
弁護士などの専門家に契約書の作成・審査依頼をするメリット
法律の専門家に契約書の作成や審査を依頼すれば、法改正への対応漏れや不利な条項の見落としを防ぎ、将来のトラブルを未然に回避できます。専門家の視点からリスクを整理できるのは大きなメリットです。
契約によるトラブルを防止できる
弁護士や行政書士などの、法律の専門家に契約書の作成や審査を依頼することで、条文の抜け漏れや曖昧な表現を事前に修正できます。将来起こり得る紛争を想定しながらチェックしてもらえるため、想定外の責任を負うリスクを減らせます。結果として、契約後の「言った・言わない」の争いを防ぎやすくなります。
専門的なアドバイスを受けられる
契約書は単なる文章ではなく、法律に基づくルールです。弁護士などの専門家は、最新の法改正や裁判例を踏まえた視点でアドバイスを行います。自社の業種や取引内容に合わせた修正案を提案してもらえるため、より実態に合った契約書を整えることができます。
法的リスクを回避できる
契約条項が強行規定に違反していないか、過度に不利な条件になっていないかを弁護士などの専門家が確認します。無効となる恐れのある条文や将来の損害賠償リスクを事前に把握できるため、安心して契約を締結できる体制を築くことが可能となります。
まとめ
古い契約書のひな形を使い続けることは、最新の法改正への未対応や、現在の取引実態とのズレといった、多くのリスクを抱えることになります。損害賠償の範囲や知的財産権の帰属など、自社を守るための重要な条項が曖昧なまま放置されているかもしれません。この機会に自社のひな形を一度見直し、現代のビジネス環境に合ったものへとアップデートすることをおすすめします。
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