契約書管理における5つの課題
契約締結の形態が多様化したことで、情報の散逸や業務の停滞を招くケースが増えています。契約管理で直面しやすい5つの課題を解説します。
1. 紙と電子の混在による保管の分散
近年、電子契約の普及が進んだ一方で、過去の紙の契約書も依然として残っています。保管形態が分散すると、書類を保管する書庫などの物理的な場と、データを保管するクラウドなどのストレージの双方を確認する必要が生じ、管理が複雑化します。
一元的な状況把握が困難になるため、必要な契約書を特定するまでに多大な時間を要します。
2. 管理の属人化と情報共有の難しさ
契約書が各部署の担当者レベルで管理されている場合、管理方法が属人化しやすくなる傾向があります。担当者の不在時や退職時に、契約の進捗状況や保管場所が分からなくなるケースも少なくありません。
組織全体で情報を共有できる仕組みが整っていなければ、担当者が不在の際に、契約の相手先からの問い合わせがあっても迅速な対応ができず、信頼関係を損ねる事態につながることもあるでしょう。
3. 保管スペース不足とコストの増加
紙の契約書を原本として保管し続ける場合、事業規模の拡大に比例して保管スペースを確保しなければなりません。オフィス内のキャビネットや外部倉庫の利用には賃料や管理費用が発生し、企業の固定費を圧迫します。
また、廃棄すべき書類の選別作業にも人件費がかかります。物理的な管理コストの増大は無視できない課題です。
4. 検索性の低さによる業務の非効率化
契約内容をすぐに確認できない状況は、業務の効率を著しく低下させます。台帳が未整備であったり、検索項目が不十分だったりすると、原本をさがすために書庫へ移動したり、ファイルを一つずつ確認する手間が生じます。
法務相談や取引先とのトラブル対応時に、過去の経緯を迅速に確認できないことは、ビジネスを停滞させ、トラブルを増大させる危険性が高くなります。
5. 情報漏洩などのセキュリティー面の不安
機密性の高い契約内容が外部へ流出することは、企業の社会的信用の失墜に直結します。紙の契約書の保管場所が無施錠であることや、アクセス権限を適切に管理できないことは、紛失や盗難のリスクを増大させます。
物理的な持ち出しや、不適切なアクセスを制御できないままの体制は、セキュリティー上の重大な懸念点です。
契約書管理の目的を解説
契約書管理は、単なる書類の保管ではありません。トラブルが発生した際に自社を守る「法的な証拠」として役立て、事業運営を停滞させないためにも重要な基盤です。
トラブル回避とリスクの低減
円滑な事業運営のためには、契約内容を正確に把握することが不可欠です。仮に取引先から不当な要求があっても、契約内容を即座に参照できれば、根拠を持って反論することができます。
ほかにも、契約の期限管理を徹底することで、意図しない自動更新や契約終了に伴う事業停止といったリスクを最小限に抑えられます。
コンプライアンスの徹底
電子帳簿保存法や各業界特有の規制を遵守することは当然ですが、社会的責任を果たすコンプライアンスの観点からも、契約書管理は極めて重要です。適切な期間、適切な方法で書類を保管することが明瞭な透明性の高い管理体制を構築することは、内部統制の強化につながります。普段からルール通りにデータを管理できていれば、監査の際なども迅速に証憑を提示することが可能となります。
業務効率化と迅速な情報共有
契約情報をデータ化して一元管理することで、全社的な業務効率が飛躍的に向上します。法務部門だけでなく、営業や購買などの関連部署が必要な情報を自ら検索・参照できれば、法務が確認する間の待ち時間を削減できます。
また、過去の契約条件を参考にしながら、新たな契約交渉を行うこともできるでしょう。情報の再利用が容易になれば、結果的に経営判断の加速に寄与します。
契約書管理が不十分な場合に生じるリスク
管理の不備は、単なる事務遅延に留まらず、深刻な経営リスクを招きます。
契約期限の超過による機会損失
契約の更新期限や解約通知の期限を把握できていないと、意図しない継続や終了を招きます。たとえば、高額な保守契約の解約期限を見逃して不要なコストが発生したり、重要なライセンスの更新を忘れて事業が停止したりするケースです。期限管理の不備は、戦略的な事業継続を妨げ、金銭的な損失を直接的にもたらします。
紛失や災害によるデータ消失
紙の契約書のみで契約書を保管している場合、火災や水害などの災害によって原本が完全に消失するリスクがあります。また、書類の整理が不十分だと、仮に書類が紛失したとしても、発覚するまでに時間がかかるでしょう。必要な時に証憑を確認できないことは、事業継続を困難にさせます。紙の契約書だけでなく、電子化したデータを残し、バックアップ体制を整えることが必要です。
意図しない契約違反の発生
契約管理が不十分だと、契約書に記載された重要事項の理解がおろそかになり、禁止事項や遵守すべき義務が把握ができなくなるおそれがあります。担当者が交代した際などに適切な引き継ぎがなされなければ、知らないうちに契約条項に違反する行動をとってしまう危険性もあります。
もし契約に違反してしまった場合は、損害賠償請求の対象となるだけでなく、企業のイメージを悪化させ、信頼を著しく損なう事態を招きます。
契約書管理の課題を解決する方法
散逸した情報を集約し、誰でも最新状況がわかる仕組みを作ることが重要です。具体的な解決策を4つ紹介します。
管理台帳の作成による一元管理
契約書の保管リストがない場合は、まず社内の各部署や担当者のもとに点在している契約書をすべて「洗い出す」ことから始めましょう。契約書の洗い出しができたら、管理台帳を作成します。最初は「契約締結日」「取引先名」「契約期間」「更新の有無」といった基本項目からデータ化し、無理のない範囲からスタートします。いきなり完璧な台帳を目指すのはハードルが高いので、段階的にステップを踏んで作成していきましょう。
共通のプラットフォームで情報を共有できれば、その台帳で契約書の一元管理ができます。情報の検索性が向上するだけでなく、組織全体で契約状況を可視化できるようになり、情報の属人化も防げます。
契約書のペーパーレス化
電子帳簿保存法(スキャナ保存制度)の要件を満たして保存すれば、紙の原本を廃棄し、電子データのみで保存することが可能となります。ただし、要件を満たさない単なるスキャン保存では、税法上の原本保存義務を果たしたことにならないため、原本の破棄はできません。
また、OCR(文字認識)処理によるテキスト化や、ファイル名などのルール化によってキーワード検索が可能になれば、書類を1枚ずつ探すような検索性の低さを解消でき、必要な書類をスムーズに探し出せるようになります。
契約書管理ルールの策定
契約書の取り扱いに関する社内ルールを策定し、周知徹底を図ります。原本の保管場所、スキャンデータの命名規則、閲覧権限の設定などを標準化することで、管理の質が安定します。
文書化された明確なルールが共有されていれば、担当者の異動や退職があっても引継ぎしやすく、安定した管理を継続できるでしょう。また、セキュリティー面のリスク低減にも大きく寄与します。
契約書管理システムの導入
手動での管理に限界を感じるなら、専用の契約書管理システムの導入が有効です。台帳作成を自動化できたり、期限のアラート通知をしたりと、アナログでの管理では困難だった機能が備わっています。システムを活用することで、人為的ミスを物理的に排除し、管理業務の効率化をデジタルトランスフォーメーションで強力に推進することができます。
契約書管理システムの選び方
重要なのは、自社の課題に合っていて、現場が迷わず操作できるシステムを選定することです。重視すべき4つのポイントをご紹介します。
管理台帳・検索機能の使いやすさで選ぶ
システム導入の主な目的は検索性の向上にあります。全文検索や、契約日、取引先名、契約終了日といった複数条件による絞り込みが直感的に行えるかを確認してください。操作画面が複雑すぎると、現場に定着しない原因となります。誰でも必要な情報に即座にアクセスできるUI(ユーザーインターフェース)を備えていることも重要です。
契約更新・期限のアラート通知機能はあるか
期限管理の漏れを防ぐために、アラート通知機能の有無は必ず確認すべき項目です。契約終了日の数ヶ月前に、担当者や管理者へメールなどで自動通知される仕組みがあれば、更新や解約を検討する時間を十分に確保できます。
通知先や通知のタイミングを柔軟に設定できれば、組織の実情にあった運用ができるでしょう。
自動データ化とAIサポート機能はあるか
大量の契約書を管理する場合は、手入力では台帳作成だけでもは多大な工数を要します。最新のシステムには、AIを用いて契約書内の項目を自動抽出し、データ化を支援する機能を備えたものもあります。
また、手入力だと誤字脱字が発生しやすく、修正への対処に手間がかかっていました。しかし、AIサポート機能が上手く機能するシステムであれば、自動でデータ化しても入力ミスの削減を実現できるため、業務の大幅なスピードアップも期待できます。
他の業務システムとの連携機能はあるか
契約書管理は独立した業務ではなく、営業支援システムや電子署名、ワークフローシステムなどと密接に関係します。既存のシステムとAPIなどで連携できれば、契約締結から管理までをシームレスに完結させることが可能です。
データの二重入力を防ぎ、全社的な業務基盤として統合できる拡張性があるかどうかを検討してください。
まとめ
契約書管理における課題は、紙と電子の混在や属人化、検索性の低さなど多岐にわたります。これらの問題を放置していると、契約期限の超過による機会損失や、情報漏洩といった深刻な事態を招きかねません。
課題解決には、管理台帳による一元管理やペーパーレス化、社内ルールの策定が有効な手段です。さらに、専用の契約書管理システムを導入することで、AIによる自動データ化やアラート機能が活用でき、業務効率を飛躍的に向上させられるでしょう。
自社に最適な管理方法を整え、契約情報を安全かつ戦略的に活用できる体制を構築してください。
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