取適法とは?下請法からの改正内容や禁止行為について解説

法務知識更新:2026.05.27

取適法とは何か、2026年1月の施行で何が変わるのかを知りたい方に向けた記事です。発注者に求められる対応や禁止行為、違反時のリスクまでを、取適法のポイントを押さえながらわかりやすく解説します。

目次

    2026年1月1日から施行された取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)とは

    取適法は、従来の下請法が改正されたものです。取適法は、委託事業者と中小受託事業者の間の取引において、不当な取り扱いを防ぎ、中小受託事業者の利益を守ることを目的としています。従来の下請法では対象外だった個人(フリーランス)が中小受託事業者に含まれるようになりました。

    2026年1月から取適法が施行された目的

    取適法が施行された背景には、個人事業主や小規模事業者が不利な条件で仕事を引き受けざるをえない状況がありました。たとえば、急な条件変更や支払いの遅れなどが長く問題視されてきたことです。こうした状況を改善し、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化を図るために、取適法は2026年1月1日から施行されました。

    下請法からの法改正内容

    取適法は、従来の下請法を見直し、対象や内容を広げた法律です。単なる名称変更ではなく、実務に大きな影響があります。

    法律名・用語の変更

    取適法では、これまで使われてきた下請法の考え方を見直し、法律名や用語が変更されています。これは、実際の取引の形に合わせて、誰が守られる対象なのかをわかりやすくするためです。

    発注者側を「委託事業者」に、受注側を「中小委託事業者」に、用語が変更されました。従来の「下請事業者」という用語言い方では伝わりにくかった個人事業主やフリーランスも、取適法では明確に対象とされています。このように用語を整理することで、自分が法律の対象となる立場をかどうかを判断しやすくする狙いがあります。

    適用対象・範囲の拡大

    取適法では、これまで主に法人同士の取引を想定していた下請法と比べ、適用対象が大きく広がっています。今回の改正により、会社の規模に関係なく、不利な条件を押し付けられやすい立場の受託事業者がより守られる仕組みになっています。
    発注する側は、取引相手の会社規模に関係なく、が誰であっても法令を意識した対応が必要になります。

    禁止行為の追加

    取適法では、これまで問題になりやすかった行為が、より具体的に禁止行為として追加されています。たとえば、仕事を始めた後に一方的に条件を変えたり、正当な理由なく追加作業を求めたりする行為です。

    これにより、立場の強い発注者が有利な条件を押し付けることを防ぐ狙いがあります。発注する側は、これまで慣習として行ってきた対応であっても、改めて見直す必要があります。

    指導・勧告・公表

    取適法では、行政措置として、企業に対して指導・勧告・公表を行います。また、同じような取引慣行が広く行われている場合、個別の指摘にとどまらず、まとめて調査や指導が行われます。日頃から取引内容を見直し、業界の慣習であっても適正かどうかを確認しておく姿勢が重要です。

    発注者に課される義務

    取適法では、発注者側に明確な義務が課されています。違反した場合には、勧告、指導のほか、50万円以下の罰金が科されることがあります。知らなかったでは済まされないため、必ず確認しておきましょう。

    書類などの作成・保存

    取適法では、発注内容や報酬、支払い条件などを記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間一定期間保存する義務があります。口約束だけで進めてしまうと、認識の違いが生まれやすくなります。

    書面やデータとして残しておくことで、トラブルを防ぎやすくなります。発注者側には、日常的に書類管理を行う体制づくりが重要になります。

    発注内容などの明示

    取適法では、仕事を依頼する際に、発注内容や報酬、納期、支払期日、支払い方法などを事前に書面または電子メールなどで明示することが義務付けられています。これは、後から「聞いていない」「認識が違う」といったトラブルを防ぐためです。

    業務範囲があいまいなまま進めると、追加作業を巡って問題が起きやすくなります。そこで、最初に条件をわかりやすく伝えることで、発注者と受注者の双方が安心して取引できるようになります。

    支払い期日の設定

    取適法では、中小受託事業者へ発注した物品等の受領日から、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定する義務があります。たとえば、「後日支払う」といったあいまいな表現はトラブルの原因になります。

    このため、具体的な日付や期限を示すことが重要です。支払い期日を明確にすることで、取引の信頼性を高めることにもつながります。

    遅延利息の支払い

    取適法では、報酬の支払いが期日を過ぎた場合、遅延利息を支払うことが義務付けられています。
    物品等の受領日から60日を経過した日から、実際に支払う日までの日数に応じ、中小受託事業者に年率14.6%の遅延利息を支払わなければなりません。

    正当な理由なく支払代金を減額した場合は、減額した日または物品等の受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から、減額分を支払う日までの期間の遅延利息を支払う義務もあります。

    委託事業者の禁止行為

    取適法では、委託する側が行ってはいけない行為が具体的に示されています。

    受領拒否

    取適法では、正当な理由がないにもかかわらず、成果物や業務の結果を受け取らない行為が禁止されています。たとえば、内容に問題がないのに受領を先延ばしにすることが禁止されています。

    発注者は事前に定めた条件に基づき、適切に受領する姿勢が求められます。

    製造委託など代金の支払い遅延

    取適法では、製造委託などの代金を正当な理由なく遅れて支払う行為が禁止されています。支払いが遅れると、受注者は資金繰りに困り、事業の継続に影響が出ることもあります。

    たとえば、納品が完了しているのに受領日から60日以内で定めた支払期日までに代金を支払わない行為は禁止されています。

    製造委託など代金の減額

    取適法では、あらかじめ合意した代金を、発注後に減額するあらゆる行為が禁止されています。振込手数料を中小受託事業者に負担させ、代金から差し引くことも違反になります。

    このため、発注者は契約内容を尊重し、変更が必要な場合は事前に話し合う姿勢が求められます。

    返品

    取適法では、正当な理由がないまま成果物を返品する行為が禁止されています。たとえば、発注時に示した条件を満たしているにもかかわらず、受け取らずに返してしまうケースです。こうした返品は、受注者に余計な負担や損失を与えます。

    このため、発注者は事前に基準を明確にし、安易な返品を行わない姿勢が求められます(ただし、不良品などの場合は受領後6か月以内であれば返品可能となります)。

    買いたたき

    取適法では、相場や内容に見合わない低い代金を一方的に押し付ける行為が禁止されています。たとえば、立場の弱さにつけ込み、断りにくい状況で不当に安い金額を提示するケースです。

    このような行為は、受注者の事業継続を難しくします。発注者は仕事内容に見合った代金を設定する姿勢が求められます。

    購入・利用の強制

    取適法では、取引と関係のない商品やサービスを無理に購入・利用させる行為が禁止されています。たとえば、仕事を発注する代わりに、特定の商品を買うよう求めるケースです。このような対応は、受注者に不要な負担を与えます。

    発注者は業務と無関係な条件を付けず、公平な取引を行う姿勢が求められます。

    報復措置

    取適法では、中小受託事業者が、委託事業者の違反行為を公正取引委員会、中小企業庁または事業所管省庁に通報したことを理由に、取引を減らしたり停止したりすることを禁じています。

    有償支給原材料などの対価の早期決済

    取適法では、発注者が原材料などを有償で支給する場合、その対価を不当に早く支払わせる行為が禁止されています。たとえば、仕事が完了する前に代金の支払いを求めるケースです。こうした対応は、受注者の資金負担を重くします。

    発注者は業務の進行状況を踏まえ、適切なタイミングで精算する姿勢が求められます。

    不当な経済上の利益の提供要請

    取適法では、発注者が取引とは関係のない金銭や労力を無償で求める行為が禁止されています。たとえば、業務と無関係な作業を無償で手伝わせるケースです。このような要請は、受注者に一方的な負担を与えます。発注者は取引内容に見合わない要求を行わず、公平な関係を保つ姿勢が求められます。

    不当な給付内容の変更・やり直し

    取適法では、正当な理由がないまま、給付内容を変更させたり、やり直しを求めたりする行為が禁止されています。たとえば、合意した内容を後から変え、追加作業を無償で求めるケースです。このような対応は、受注者に大きな負担を与えます。発注者は契約内容を尊重する姿勢が大切です。

    協議に応じない一方的な代金決定

    取適法では、受注者と話し合いをせず、一方的に代金を決める行為が禁止されています。たとえば、相手の意見を聞かずに金額を提示し、変更を認めないケースです。このような対応では、対等な取引関係が成り立ちません。発注者には事前に協議し、双方が納得した上で代金を決める姿勢が求められます。

    取適法施行により求められる対応

    取適法が施行されたことで、企業には具体的な対応が求められます。

    取引内容の精査

    取適法の施行により、これまで行ってきた取引内容が法律に合っているかを見直すことが重要になります。たとえば、契約条件があいまいなまま進めていないか、支払い方法や期日に問題がないかを確認します。

    こうして1つずつ精査することで、知らないうちに違反してしまうリスクを減らし、安心して取引を続けられるようになります。

    社内規程・フォーマットなどの見直し

    取適法に対応するためには、取引条件の記載が不足していたり、古い表現のままになっていたりする場合を防ぐために、社内で使っている規程や契約書のフォーマットを見直すことが欠かせません。

    たとえば、社内の規定には以下があります。

    • 外注管理規程:発注や検収の手順、選定基準を定めた規定
    • 購買管理規程:取引条件の決定方法や契約締結のフローを定めた規定
    • コンプライアンス規程:法令遵守の姿勢や禁止事項を明文化した規定

    ここで内容を整理し、誰が見てもわかる形に整えることで、実務での判断ミスを防ぎやすくなります。また、社内で共通のルールを持つことが、法令違反の予防につながります。

    手形を使用しない支払い方法の検討

    下請法および取適法の運用においては「手形支払いのサイト短縮(60日以内)への要請」が行われます。手形は、受注者がすぐに現金を受け取れず、資金繰りに負担がかかる場合があります。そこで、振込などわかりやすく確実な支払い方法を検討することが重要です。支払い方法を改善することで、取引の透明性が高まり、トラブル防止にもつながります。

    取適法に違反した場合の罰則

    取適法に違反した場合、公正取引委員会または中小企業庁は、事業者に対して調査を行い、指導や助言を行います。内容が悪質な場合には、企業名が公表されることもあり、社会的な信用に大きな影響を与えます。また、改善が見られないと、さらに厳しい措置につながるおそれもあります。

    そのため、罰則そのものだけでなく、企業イメージへの影響を理解した上で、日頃から法令を守った取引を行うことが重要です。

    まとめ

    取適法は、取引の立場が弱くなりやすい事業者を守り、取引をより公平にするための法律です。法律名や対象範囲が見直され、発注者にはこれまで以上に丁寧な対応が求められます。

    取引条件を明確にし、支払いを適切に行うことは、トラブル防止だけでなく信頼関係の維持にもつながります。そのためにはさらに、社内ルールや実務の見直しをすることが進めることも欠かせません。今回の法改正の内容を踏まえ、日常の取引を見直すことが、取適法への確実な対応と言えるでしょう。

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