「目の前の案件対応」がルール化を後回しに。年1,200件超を前に直面した課題
MNTSQ 田邉:はじめに、GSユアサ様の事業概要についてお聞かせください。

嶋田:
当社グループは、大雑把に一言で表現するなら、自動車用から産業用まで、多彩な電池を手がける「電池の総合メーカー」です。
私達は当社グループの中核事業会社であるGSユアサに所属しておりますが、その主要製品は大きく分けると3つあります。1つ目は、自動車用・二輪車用の鉛蓄電池。2つ目は、フォークリフト用、工場や各種インフラのバックアップ用、再生可能エネルギー電源等に併設するための定置用といった産業用の領域。産業用では、電池だけでなくバックアップ用電源や蓄電システムといった装置も扱っています。そして3つ目が、車載用のリチウムイオン電池です。この単位で自動車電池事業部・産業電池電源事業部・リチウムイオン電池事業部と、事業部が分かれています。これらに加え、グループ会社では航空用や宇宙用の電池といった領域まで幅広く展開しています。
MNTSQ 田邉:一口に「電池」と言っても用途ごとに事業が多角化されているのですね。会社全体の規模感と、法務部の体制について教えてください。
嶋田:
従業員数としては、グループ連結で12,562名、GSユアサ本体で3,389名となります(2026年3月時点)。法務部には全体で22名が在籍しており、4つのグループ(課)で構成されています。
今回のMNTSQ導入を主導したのは、契約審査や法律相談を担う「法務グループ」です。そのほかに、社内規則管理、稟議制度運用、株式・適時開示業務、持株会支援を担う「株式・ガバナンスグループ」、リスク管理・危機管理推進や内部通報制度運用を担う「リスク管理グループ」、そして安全保障貿易管理を担う「輸出管理グループ」があります。他社では総務や経営企画などに分散しがちな、ガバナンスやリスク管理、輸出管理といった機能まで、すべて法務部で担っている点が当社法務部の大きな特徴ですね。
MNTSQ 田邉:今回、MNTSQを導入された法務グループは8名体制と伺っています。本体数3,389名という規模に対して少数精鋭なチームになるため、日々の業務負担も大きかったのではないでしょうか。
有川:
そうですね。契約審査や法律相談の依頼は右肩上がりに増えており、昨年度は年間1,200件を突破しました。
この膨大な案件にわずか8名で対応しているため、以前は全体の案件数の把握にも苦労しており、過去検討時のナレッジ蓄積も不十分で、管理にはかなり苦戦していました。その状況が、MNTSQの導入によって一気に改善されたと感じています。
MNTSQ 田邉:一方で、締結済みの「契約書そのもの」の管理は、当時どうされていたのですか?
有川:
当社は法務部ではなく各事業部が個別に契約を締結し、原本もそれぞれの部署で保管しています。法務部として全部署共通の契約書管理のルールを作らなければと思いつつも、日々の案件対応に追われ、長年「現場の裁量任せ」になっていたのが実態です。
「脱 既存グループウェア」というグループ全体の課題。案件管理と契約管理、別々だった検討が一つに
MNTSQ 田邉:案件管理と契約管理とでは、検討の背景が異なると伺っています。まず、案件管理の課題から教えていただけますか。

有川:
案件管理は、従来は既存グループウェアのデータベースを法律相談の受付フォームとして使用していました。しかし、当社グループ方針として既存グループウェアの利用を終了し、Microsoftが提供するサービスを中心とした別のシステムへ移行することになりました。
かといって、単にExcelやSharePointへ置き換えるだけでは従来の管理不足を解決できないため、腰を据えてリーガルテックを選定することにしました。
MNTSQ 田邉:もう一方の契約管理については、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
有川:
ある事業部から「契約書が担当者の手元に保管されていて、見える化等の管理ができていない。助けてほしい。」と相談を受けたのが始まりです。議論を進めるうちに、これは一部署にとどまらない全部署共通の課題だと確信しました。それならば、法務部が主導して統一プラットフォームを用意し、全部署に導入して一気に解決してしまおうと、スコープを広げていったのです。検討のプロジェクトは2023年秋、法務グループと自動車電池事業部や産業電池電源事業部などが密に連携する形でスタートしました。
MNTSQ 田邉:もともと別々に動いていた2つの検討が、1つのプロジェクトへ集約されていったのですね。
有川:
そうですね。案件管理の仕組みとしてMNTSQさんのお話を伺った際、締結済みの契約書管理まで一気通貫でカバーできるシステムだと知りました。実は契約管理については別のベンダーで候補を絞り込みつつあったのですが、受付から保管までを同じシステムで一元管理した方が確実に業務効率は高まります。そこで、法務部から事業部を説得する形でMNTSQをプレゼンし、案件管理も契約管理もMNTSQに統一する方針に切り替えました。
嶋田:
最大の推進力となったのは、やはり当社グループ全体の「脱 既存グループウェア」の動きです。案件管理だけでなく、契約管理についても一部部署は既存グループウェアを使っていたため、どちらにも共通する課題だったからこそ、MNTSQによる一元管理への移行がスムーズに受け入れられた側面もあります。
決め手は「フローを変えない」メールベースの運用
MNTSQ 田邉:そこから、どのように製品の選定を進められたのでしょうか。最初からMNTSQをご存知だったわけではないですよね。

加藤:
当時はリーガルテックが急速に普及し始めた時期で、まずはリーガルテックを複数取り上げて機能比較する記事をインターネットで見つけたので、これを参考に、10社ほど候補を拾い上げました。最初は条件を狭めずに広くリストアップし、公開情報を調べたうえで選別を進めた後、段階的に直接お話を伺いにいく形をとりました。
MNTSQ 田邉:その10社にMNTSQも含まれていたのですね。当時はまだ弊社の案件管理機能が広く知られていなかったかと思いますが、どのようなきっかけで注目されたのですか。
加藤:
たまたまオムロン様の導入事例記事を拝見したのがきっかけです。「これなら当社のやりたい案件管理が実現できる」と具体的にイメージが湧き、候補に加えました。広く情報を集めている段階だったからこそ、実際に活用されている企業の生の声は非常に参考になり、大きな後押しになりましたね。
MNTSQ 田邉:最終的には何社ほどに絞り込み、何が決め手になったのでしょうか。
加藤:
最終的には3〜4社まで絞り込んで詳細に比較しました。実は初期段階からMNTSQが最も当社に合っていると感じていたのですが、判断のポイントは大きく2点ありました。
「既存のフローを変えずにメールのみでのコミュニケーションを維持できること」と「ナレッジマネジメントの向上」です。これらを総合的に評価し、当初の想定通りMNTSQに決定しました。
有川:
特に前者の点は大きかったです。他社サービスの多くは独自のクラウドに都度ログインし、そのサイト内でやり取りする仕様が主流でしたが、毎日法務部と関わるわけではない事業部には負担が大きいと思われます。その点MNTSQは、案件受付後はメールだけで事業部とのやりとりが完結しますし、そのメールのCCに案件ごとに自動生成されるアドレスを追加するだけでやりとりを記録に残すことができます。事業部-法務部間のコミュニケーションの方法を変えずに、確実な受付とナレッジ蓄積を両立できる点が、非常に魅力的でした。
25部署への個別説明会を実施。紙台帳のPDF化まで「現場に寄り添った全社展開」
MNTSQ 田邉:ここからは導入プロセスについて伺います。全社展開にあたってはかなりの社内調整を重ねられたそうですが、案件管理と契約管理で進め方に違いはありましたか。
嶋田:
案件管理は、メールのみで事業部とやりとりする運用を変える必要がなかったため、事業部に案件依頼時のMNTSQの操作感を確かめてもらう等のテストはしましたが、法務部内だけで検討がほぼ完結しました。一方で、全部署で運用の統一が必要な「契約管理」は、各部署の現状や意向を丁寧に確認しながら、慎重に話を進めました。
MNTSQ 田邉:すでに独自で仕組みを動かしている部署もあるなか、具体的にどのような社内調整を行っていったのでしょうか。
有川:
事業部以外の研究開発部署・管理部署等も含め、25ほどある部署のすべてに対して、1〜2時間の個別説明会を設定し、丁寧に説明して回りました。すでに独自でSharePointや他社リーガルテックを導入している「意識の高い部署」もありましたが、それらを否定せず「全部署の契約書を一元管理することが、将来のガバナンスに不可欠だ」という意義を伝えて理解を得ていきました。
MNTSQ 田邉:部署によって契約書台帳の管理項目が大きく異なっていた点も、調整が難しかったのではないでしょうか。
加藤:
現場が培ってきた運用を壊すと、移行後に使われなくなってしまいます。そのため、今の管理体制をなるべく維持できるよう、例えば既存の契約書台帳の管理項目は「共通カスタム項目」で引き続き維持する方針をとりました。
MNTSQさんからいただいた設定用のExcelシートを当社向けに改良し、「現在の管理に合わせて必要な項目を教えてください」と、直接対面で対話を重ねながら項目を集約していきました。
MNTSQ 田邉:これだけ大規模なプロジェクトだと、途中で頓挫してしまうお客様も少なくないなかで、最初の一歩を踏み出してここまで集約されたのは本当に素晴らしいですね。過去の契約原本は、すべてデータ化されていたのですか。
加藤:
それも部署によってまちまちでした。原本をPDFではなく紙で参照している部署もあり、そうしたところはPDF化の相談から泥臭く進めている状況です。
MNTSQ 田邉:紙とデータが混在していても、PDF化してMNTSQに格納すれば、OCR(紙やPDFの文字を読み取ってデータ化する機能)によって契約書の本文まで検索できるようになりますよね。現在の移行進捗はどれくらいでしょうか。
有川:
契約管理は昨年度にリリースし、現在は6,500件ほどが登録されています。移行全体としては、まだ10〜20%ほどの進捗であり、各部署分を並行して進めている段階です。大量の過去データを持つ部署の移行が今後の課題ですが、「どう移行すればいいのか」を一つひとつ深掘りしながら、具体的な移行方法や適切な委託先まで、その都度MNTSQさんに相談し、ご提案いただきながら進めています。
導入支援時に、田邉さんからは「項目を一度絞り込んで標準化したほうがいい」と助言をいただいたことがありました。ただ、現場に寄り添わなければ使ってもらえない。そのギリギリの落としどころを探るなかで、当社の複雑な事情を理解し、最後まで伴走してくださったのは本当に心強かったです。
手作業のナレッジ蓄積が不要に。「メールが自動で残る」感動と、本文まで届く検索性
MNTSQ 田邉:実際に稼働してみて、法務部内ではどのような効果を感じていらっしゃいますか。まずは案件管理の面から教えてください。
加藤:
既存グループウェアの時代は、メールで回答した内容をナレッジとして残すために、データベースへ手作業で貼り付けるステップがありました。それが今はメールの自動取り込みに変わったため、余計な手間をかけずに確実なナレッジ蓄積ができるようになりました。法務部がやらなくてよい作業が減った形で、相談件数が多いぶん、削減効果も大きいと感じています。
MNTSQ 田邉:年間1,200件超を考えると、一件あたりは小さな手間でも、積み上げれば相当な工数削減になりますね。
有川:
おっしゃる通りです。以前の手動コピペは属人的で蓄積要否判断や入力形式のバラつきが激しかったのですが、自動化されたことで人による差がなくなりました。リアルタイムで案件の総数や進捗、どの案件が長く滞留しているかも一目で把握でき、担当者ごとのページで状況が瞬時に可視化されるため、法務部内でのサポートもしやすくなっています。
嶋田:
マネージャー目線でも、各担当者が今抱えている手持ち件数がすぐに分かるため、「この案件はこの人に」といった最適な差配が非常にやりやすくなりました。

MNTSQ 田邉:その可視化はデータにも表れています。御社は一次回答を「完了」ステータスにされているため対応日数を正確に集計でき、MNTSQの利用データでは平均対応日数は約5日。事業部の希望期限内に対応できている実態が数字として証明されました。
有川:
そうですね。これまではデータ化すらできていなかったので、自分たちの対応スピードの実態を数字で把握できるようになった意義は大きいです。
MNTSQ 田邉:過去の事例を参照する、といったナレッジの検索性はいかがでしょうか。
加藤:
私は法務歴が浅いため、上長にダブルチェックをお願いする際に関連案件を紹介してもらうことが多いのですが、MNTSQ内でリンクを辿って過去案件へスムーズに飛べるため非常に便利です。
検索性そのものも格段に上がっています。MNTSQでは添付ファイルの中身まで検索できるようになり、便利になりました。
嶋田:
それに加えて、当社の複合機などはOCRが入っておらず、今まではPDFの中身まで検索することが不可能でした。それがMNTSQによって本文検索までできるようになり、この効果はデータが蓄積されるほどさらに効いてくるはずです。
MNTSQ 田邉:事業部の皆様からの反響はいかがですか。
嶋田:
メールでやり取りした内容がそのままシステムに自動格納される点に、感動する声が多く届いています。記録が残ることは双方にメリットがあるため、非常に好意的です。
有川:
以前のナレッジデータベースは法務部内しか閲覧権限がありませんでしたが、MNTSQでは案件ごとに事業部側にも権限が付与されます。メールを検索し直さなくても、年に数回しか依頼しない部署の担当者まで、過去のやり取りをMNTSQ上で簡単に振り返ることができます。「前回はこういう指摘をもらったから、今回はこうしよう」と事業部側で確認し、自発的に判断の当たりをつけられるようになったのは、非常に大きな変化です。
「契約書管理に正解はない」中で統一基準を。取り戻した時間を、攻めの法務へ
MNTSQ 田邉:今回の導入を通じて、一番大きく変わった、あるいは導入してよかったと感じるポイントはどこでしょうか。

有川:
「契約書をどう管理すべきか」という問いに、おそらく唯一の正解はなく、会社ごとに最適解が異なります。だからこそ、これまでは事業部に明確なルールを示せず「各部署の裁量で管理してください」と言わざるを得ませんでした。それが当社にとってガバナンス上の大きな課題でした。まだ道半ばではありますが、法務部として自信を持って「このシステムを使い、この基準で管理してください」と、事業部に対して明確な姿勢を示せたこと。これが現時点で最大の成果だと感じています。
MNTSQ 田邉:事業部の契約管理を法務部が横断的に見られるようになることは、リスクヘッジの観点でも大きなインパクトがありますね。
有川:
まさにそこが本質です。これまでは管理ルールが曖昧だったために、法律相談の出発点となる「その取引先と今どんな契約を締結しているか」を確認しても、「すぐには分からない」という返答が一度や二度ではありませんでした。これは単なる書類管理の問題ではなく、ビジネスにおける取引先との関係性を瞬時に把握できないという、経営上のリスクでもあります。そこが解決に向けて一歩踏み出せた意義は非常に大きいです。
加藤:
各部署へヒアリングを重ねる中で、「契約書台帳に従来からあったこの管理項目は本当に必要なのか」「逆にこの項目もあったほうがいいのではないか」という声が挙がった部署もあります。今回のプロジェクトが「契約書の管理は重要だ」と改めて振り返るきっかけになった側面もあるかもしれません。
MNTSQ 田邉:それでは最後に、法務部としての今後の展望や、MNTSQへの期待をお聞かせください。
嶋田:
やはりAIの活用ですね。MNTSQさんが導入されたAIチャット機能をはじめ、今後はさらに実務で使えるものへ進化していくはずです。テクノロジーによって定型業務の工数を削減し、そこで取り戻した時間を事業拡大への貢献に充てたいと考えています。
有川:
4月に年度が変わり、役員クラスからも法務の業務効率化に対して強い要望と期待を感じています。わずか8名で年間1,200件超の案件をこなす中、日々の業務に追われて重要なプロジェクトへの関わりが不十分になりがちな状況を、AIの力で突破したいという思いがあります。
AIチャット機能は、現時点では法律相談の回答補助としてはあまり活用できていないのですが、過去案件の初動リサーチや要約には十分活用できますし、今後の精度向上によって新人教育やさらなる工数削減につながるはずです。これからの開発に大いに期待しています。
加藤:
案件のリサーチや検討サポート面でのAI活用は、今後さらに重要度が増すと思います。MNTSQという統一プラットフォームに調べ物やデータが集約されていけば、それ自体が強固なナレッジ基盤へと育っていくはずですので、今後の機能拡張を楽しみにしています。
MNTSQ 田邉:GSユアサの皆様、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。


