<参加者>
法務部 担当マネージャー 小原 大志様
MNTSQ カスタマーサクセス担当 田邉 崇宏
※以下、敬称略
※2025年9月時点の役職です
書籍から始めたリーガルテック調査

MNTSQ田邉:
御社のDX推進をスタートさせた背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。
小原:
法務部の業務効率化を加速させる必要性が高まる中、2021年頃に法務担当役員からリーガルテックの市場調査・導入検討をしようと提案されたことが1つのきっかけでした。
全社的にもDXは推進されていたのですが、今回のプロジェクトは法務部が独⾃に企画・検討を進めました。
MNTSQ田邉:
法務部としては、DX推進することで具体的にどのような状態を目指していたのでしょうか?
小原:
一番実現したかったのは、限られた人員で効率的かつ質の高い業務を遂行できる状態です。そのために、まずリーガルテック市場にはどのようなサービスがあり、どれを導⼊すると法務部にとって⼀番プラスになるのかを調べるところから始めました。
MNTSQ田邉:
類似する課題があっても、何から着手すればいいのかがわからず、DXの一歩目を踏み出せない企業も多いと思うのですが、御社の場合はどんなことから始められましたか。
小原:
私たちの場合、第一歩目として、まず書籍を読みました。
「リーガルオペレーション革命(佐々木 毅尚 (著))」などの書籍や法務系雑誌を読み、リーガルテックの種類を大まかに把握したうえで、何を導⼊すれば業務効率化や品質向上を実現できるのかを検討しました。
具体的には、半年ほどかけて様々なベンダーからお話を聞いたり、法務部のメンバーに現状の課題や導入希望のシステムについてアンケートを取るといった活動です。
その結果、当社の場合は契約管理・案件管理システムの優先度が高いということが見えてきました。具体的には、簡単に法務相談の案件や文書を登録できて、さらに、それらの情報へ簡単にアクセスできる環境の構築です。
ちょうど中途⼊社が多かった時期でもあり、過去の事例や資料を簡単に探せるようにしてほしいという声は少なくなかったですね。
MNTSQ田邉:
虫の目ではなく、鳥の目で全体調査をされたということですね。今回はMNTSQを導入いただきましたが、その他に検討されたのはどのようなカテゴリのサービスでしたか。
小原:
他には、AI契約書レビューも検討していました。
MNTSQ田邉:
他ツールと比較される際、機能や⾦額、サポートなど様々な項目があるなかで重視されたのは何でしたか。
小原:
やはり一番は機能です。AI契約書レビューと契約管理は全く違うサービスなので単純⽐較はできなかったのですが、それぞれの機能を洗い出して、どちらが当社にとってより効果的なのかを検討しました。
担当役員の理解を得て、予算申請から導入まで一気に推進

MNTSQ田邉:
DXを進める上で悩みとなりがちな、予算申請についてもお伺いできればと思います。今回の法務DXは、元々予算を取得できていたのか、それともプロジェクトを企画してから予算を申請したのかだと、どちらのパターンだったのでしょうか。
小原:
当社の場合は後者です。もともと法務部の予算としては持っていませんでしたので、新規に申請しました。
MNTSQ田邉:
企業によっては、予算を申請する際に定量的な成果や費用対効果を提示するよう求められる、というお話もよく聞きます。御社の場合は、予算承認に関して苦労された点はありますか?
小原:
法務担当役員がDX推進の理解者であったため、幸いにも私の立場で大きな苦労はありませんでした。限られた人員で法務業務の維持向上を図る必要があり、現場が必要ならコストをかけるべきという考えでしたし、予算申請から承認まではスムーズに進められました。MNTSQの提案資料に、導入後にどのような変化が出るのかなど、定量的な予測値を入れていただいていたので、そちらも申請の際に大変役立ちました。
全員参加のトライアルで導入後のギャップを最小化
MNTSQ田邉:
実際にMNTSQを導入いただいて、提案資料の内容とギャップを感じられることはなかったでしょうか。

小原:
大枠はイメージ通りでした。ただ、提案資料だけを見て判断すると、どうしても大小のギャップが出てくると思っていましたし、導⼊後に「使いにくい」「思っていたものと違う」などの意見が出ても引き返せないため、導入前に全員参加のトライアルを実施しました。ツールの使い勝手を全員に評価・理解してもらった上で導入を決めたのが、導入後のギャップが少なかった要因だと思います。言葉だけで説明を重ねるより、実際に触ってもらうのが一番でした。
MNTSQ田邉:
もし、イメージどおりに運用できなかった場合は想定されていましたか?例えば、プランBとして、「別のツールを導入し直す」などの選択肢はあったのでしょうか。
小原:
トライアルを実施して、ある程度確信を持ったうえで進めましたので、プランBに移行することは考えていませんでした。別のツールを導入し直すのは、費用・工数面でも大きなマイナスですし、そうならないよう慎重に検討を重ねました。
今後は、導入後の効果測定も実施したいと考えています。MNTSQを導⼊したことで検索可能なナレッジがどれだけ蓄積されているのかを可視化したいですし、検索・活用状況についても確認する必要があると考えます。これまでは重要性の高いメールを別途手動で蓄積・管理することが手間で、その結果蓄積されないケースもあったのですが、今は自動的に蓄積される仕組みになったので、どれほどのナレッジが溜まっているのか、結果が楽しみですね。
事業部への展開と定着化
MNTSQ田邉:
案件管理の場合、法務部の皆様だけでなく事業部側の方たちも利用されると思うのですが、事業部側への利用促進に関してはいかがでしたか?
小原:
事業部への導入についても、大きな苦労はありませんでした。必要があれば説明会を開く予定でしたが、結果的にはそれも不要で、全社に向けてツール導入の通知を出すだけで皆さんに使ってもらえるようになりました。
通知の内容にナレッジマネジメントの必要性や、担当部の業務効率化にも資することなどを記載したおかげもあるのかなと思います。

MNTSQ田邉:
スムーズに導入が進んだのは素晴らしいですね。使い始めていただき、ある程度経っていますが、法務部への相談はMNTSQを通じて行う、がもう定着しているかたちでしょうか?
小原:
はい。最初は通知を見ていなかった人が従来どおりメールで依頼してくるケースも散見されましたが、今は定着したと思います。
MNTSQの依頼フォームは、どのような情報を法務部に伝える必要があるか見れば分かる構造になっていますし、法務部の誰が担当かを知らなくても依頼・相談できるため、従来よりむしろ依頼しやすくなった効果があるような印象です。
データ移行が重要なポイント
MNTSQ田邉:
ここまで御社のDX推進についてお伺いしてきましたが、もしこのプロジェクトの開始時に戻れるとしたら、振り返りたいポイントなどはあるでしょうか。
小原:
特にこれというものはありませんが、強いていえば、旧システムからのデータ移行についてはもう少し改善できる余地があったかもしれないなと感じています。実務的な話ですが、ファイル名や属性情報など、様々なデータの前処理をもう少しうまくできたかなと思います。
とはいえ、データ移⾏が一つのキモになることは導⼊前からわかっていましたし、その点については何度も検討と議論を重ねましたので、全体的にはうまく移行できたと思っています。
田邉さんとキックオフミーティングで初めてお会いしたときに、「間違いなく⼤変だと思いますけど、よろしくお願いします」とお伝えしたのですが、本当にそのとおりでしたね。毎週のように定例会で協議させていただきました。
これから導⼊される企業の方々も、データ移行については十分なリソースを割いて検討された⽅がいいのかなと思います。
MNTSQ田邉:
三菱⾃動⾞様の導入プロジェクトはデータの移行がなかなか大変でしたね。実は、当時MNTSQではまだできなかったことが、本プロジェクトのおかげで機能として実装された、というものがいくつかあったりします。御社と共にプロジェクト推進できたことで、MNTSQもプロダクトとしてぐっと成長できました。
リーガルテックの活用は、企業の法務力に大きく影響する

MNTSQ田邉:
これからDXを推進し始める法務の⽅、企業の⽅に何かメッセージがあればお願いいたします。
小原:
実際に導入を進める際は、既存システムの仕組みやデータの持ち方を理解している⼈や、法務の実務を理解している人の参画が不可欠だと考えます。また、若手世代に参加してもらうことも同じくらい重要で、これまでの経験からも、むしろ若手中心として推進してもらったほうがよいと感じています。AIなどの最新の技術トレンドに強く、アイディアが柔軟に出てきやすいのも若い世代だと思っていますし、これからDXを推進するのであれば、様々なバックグラウンドを持つメンバーでチームを組むことが、成功するための⼀つの鍵ではないかと思います。
MNTSQ田邉:
実際に経験された企業の方からお伺いする、失敗しそうなことや成功の鍵は大変参考になります。
小原:
あまり偉そうなことは言えないのですが・・・。
リーガルテックツールの利用は単なる業務効率化にとどまらず、企業の法務⼒や交渉力そのものに大きく影響する可能性があるという点もお伝えしたいですね。
企業法務⼒は、法務人材の知識・経験・能⼒、組織体制、連携可能な外部専門家などに左右される部分が大きいですが、それらに加えて、どのようなシステムを活用できるのかもますます重要になってきていると実感しています。例えば交渉相⼿が強⼒なリーガルテックツールを使っていると、その時点でかなりの情報格差が出てしまいます。そのような状況で契約交渉を進めていくのは自社にとって不利だと思うのです。
多くの企業がツールを導⼊して、容易にナレッジを管理・活用して交渉に臨む時代になってきています。立ち止まっていると遅れていきますので、少しでも早く自社に合ったツールを検討し、積極的に導⼊を進められるとよいのではないかと思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。



