CLM(契約ライフサイクルマネジメント)とは?
CLMは、契約の準備から締結、管理、更新までの一連の流れを効率化する手法です。
契約業務には法務だけでなく営業や調達、経営企画など複数部署が関わるため、進行が滞るリスクがあります。そこで、CLMを導入することで契約プロセスを標準化し、作業時間の短縮やリスク抑制につなげられます。
近年では、契約作成から承認、締結、更新・管理までを一元化できるITシステムも普及しており、契約全体をカバーするリーガルテックソリューションとして注目されています。
CLM各工程の基本フロー
ここでは、CLMを構成する代表的なフローを解説します。CLMを活用する際の参考にしてみてください。
契約書作成・審査・レビュー
契約業務は、契約書の草案を作成する段階から始まります。自社のひな形をベースに草稿を準備する場合もあれば、取引先から契約書案が提示されるケースもあります。いずれの場合も、法務部門によるリーガルチェックが欠かせません。
契約条件が法令に適合しているか、自社に不利益な条項が含まれていないかを精査し、必要に応じて修正や加筆を行います。こうしたレビューの過程を経ることで、リスクの早期発見とトラブルの未然防止につながります。
社内稟議・承認・契約締結
審査を終えて契約内容が確定すると、社内での稟議や承認プロセスへと進みます。稟議は企業ごとにルールが異なりますが、一般的には起案、関係部署での確認、決裁権者による承認を経て契約締結が可能となります。
契約書の締結方法には、紙媒体による署名・押印と、電子契約サービスを用いたオンラインでの締結の2種類があります。特に電子契約は、進捗状況が可視化され、郵送などの手間を省けるため、効率的に締結を進められる点がメリットです。
契約書管理・更新
契約は締結して終わりではなく、その後の管理と更新も重要な工程に含まれます。契約書は紙であればファイリング、電子契約であればシステム上で適切に保管し、更新期限や自動更新の有無を正確に把握する必要があります。
契約の更新日を見落とすと不要な契約が継続してしまうリスクがあるため、台帳や管理ツールを活用して期日を徹底的に管理することが求められます。こうした管理体制が整ってこそ、契約業務全体の効率化とリスク低減を実現できます。
導入すると何が変わる?CLMのメリット3選
CLMを導入すると、これまで複雑だった契約業務が効率化され、リスク管理も進みます。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
1.契約業務がスムーズになり、担当者による作業のばらつきを解消できる
従来はWordやメール、Excelを行き来して契約業務を進めることが多く、手間やミスが発生しやすい状況でした。
CLMを導入すると、契約書の作成からレビュー、承認、締結、保管までを1つの流れで管理できます。その結果、業務全体がスムーズに進み、担当者による作業のばらつきも減らせます。
さらに、ひな形検索やAIチェック機能を活用することで、契約作成や審査にかかる時間が短縮できるのもメリットです。誰でも一定の品質で契約処理を行える環境を整えられます。
2.契約の更新漏れやリスクを未然に防げる
契約更新の管理は、担当者の経験や記憶に頼る部分が多く、更新漏れがトラブルの原因となることも少なくありません。CLMには期限管理機能が搭載されており、契約更新の数か月前から自動通知が送信されるため、余裕をもって対応が可能です。
また、AIによる条項チェックやリスク分析機能を活用することで、見落としや不利な条件を未然に防げます。契約管理を「人の注意」に依存しない仕組みに変えられることは、企業にとって大きな安心材料となるでしょう。
3.プロセスの見える化でセキュリティ強化できる
CLMを導入すると、契約の進捗状況や担当者の作業内容がリアルタイムで可視化されます。誰がどの作業を担当しているのか、どの段階で承認が止まっているのかが一目でわかるため、業務の停滞や責任の曖昧さを解消できます。
さらに、契約書のアクセス権を細かく設定できるため、機密性の高い情報を適切に管理可能です。改ざん防止や不正アクセス対策も強化されることから、企業のセキュリティ体制そのものを底上げする効果も期待できます。
CLMの導入フロー
ここでは、CLM導入の基本的な流れを3つのステップに分けてご紹介します。
1.現状把握と導入目的の明確化
まずは自社の契約業務の現状を把握します。どの部門でどの契約が扱われ、締結までにどれくらい時間がかかっているか、承認フローのボトルネックも確認しましょう。
同時に「CLMで何を解決したいか」を明確にすることも重要です。目的が定まることで、適切なツール選定や効果測定の基準が設定でき、社内への説得力も高まります。
2.小規模テスト運用から本格導入
次のステップとして、本格導入前に特定部門や契約種別でテスト運用を行い、業務への適合性を確認します。利用者のフィードバックをもとに設定や運用ルールを調整することで、全社展開時の混乱やトラブルを減らせます。
3.社内教育と運用体制の構築
最後のステップは、社内への定着を図るための教育と運用体制づくりです。導入後は、部門ごとの役割に応じた研修や操作マニュアル、FAQ、ヘルプデスクなどでサポート体制を整えましょう。
導入事例から学ぶ業務改善の具体例
ここでは、大企業から小売業までの具体的な事例をもとに、CLMによる改善ポイントを紹介します。
三菱自動車工業株式会社:大企業におけるCLM導入による業務改革
三菱自動車工業株式会社では、契約案件が増え、従来の管理方法では対応が追いつかなくなっていました。そこでMNTSQを導入し、メールの自動連携で契約情報をまとめることにしました。そのおかげで、必要な案件をすぐに検索でき、会議中の確認もスムーズになりました。
さらに、イントラネットに依頼フォームと社内マニュアルを整備したことで、従業員が迷わず操作・相談できる環境が整い、業務効率化とナレッジ活用が進みました。
パナソニックグループ:単なるシステム導入ではなく、経営課題解決としてのCLM活用
パナソニックグループでは、ホールディングス体制への移行を契機に、契約業務を一気通貫で管理できる体制を整えるためMNTSQを導入しています。グループ全体で8万人を超える大規模組織で、旧システムに点在していた過去のナレッジを集約し、法務部門の情報を横断的に活用できる環境を構築しました。
事業部門は自身の契約を効率的に管理できるようになり、ナレッジ共有が促進されたことで業務効率も向上しています。
京セラドキュメントソリューションズ株式会社:部門横断での業務効率化を推進
京セラドキュメントソリューションズでは、事業部門からの法律相談や契約管理のフロー確立が長年の課題でした。MNTSQを導入することで、契約書と案件管理を一気通貫で行える体制を構築し、法務課・コンプライアンス推進課間でナレッジを共有できるようになりました。
さらに、案件管理の可視化によって業務量を把握でき、事業部門とのコミュニケーションにも活用されるなど、部門横断の業務効率化を実現しています。
株式会社ニトリホールディングス:小売業界でのCLM導入によるナレッジマネジメント強化
ニトリホールディングスの法務室では、人事異動が多くナレッジの蓄積が難しい状況でした。案件と契約書の情報も分断されていたため、過去の経緯を確認するのに時間がかかっていた状況です。
そこで、案件管理から契約書管理まで一気通貫で対応できるMNTSQを導入したところ、7,000件以上の過去案件が参照可能になり、検索や情報活用が格段にスムーズになりました。
さらに、事業部からの相談をMNTSQに統一したことで業務中断が減り、問い合わせ内容の齟齬も防げるようになりました。新人でも過去案件を確認しながら対応でき、業務効率とナレッジ共有の両立が実現しています。
自社に合ったCLMツールを選ぶときのポイント
最後に、自社に適したツール選定時に押さえるべきポイントについて、3つの観点から解説します。
契約ライフサイクル全体のカバー範囲
CLMツールには、契約書の作成から管理まで一気通貫で対応できる統合型と、電子契約やワークフローなど特定領域に特化したものがあります。まずは自社の導入目的を明確にし、「承認プロセスだけをデジタル化したい」のか、「契約業務全体を刷新したい」のかを整理しましょう。
全社導入を目指すのか、特定部門から段階的に拡張するのかによって、最適なツールは変わってきます。
自社業務に必要な機能とセキュリティ要件
契約書の検索性や契約ステータスの可視化、契約データの分析可能性など、自社業務に合った機能があるかを確認しましょう。AIによる全文検索や自動分類機能があれば、必要な情報を素早く取り出せます。
また、契約書には機密情報が含まれるため、データ暗号化やアクセス制御、監査ログ、バックアップ体制など、セキュリティが万全かも必ずチェックしてください。「ISO/IEC 27001」や「SOC 2 Type II」などの認証取得状況を確認することも有効です。
導入・運用コストと費用対効果
CLMツールは単なるソフト導入ではなく、業務改革の投資です。初期費用だけでなく、運用・保守コスト、既存システムとの連携やカスタマイズ費用も含めて総合的に評価しましょう。
特にCRMやERP、電子契約サービスとの連携がスムーズにできるか、APIや双方向同期の可否を確認することで、導入後の業務分断を防げます。ユーザビリティの高さとセキュリティの両立も、費用対効果を最大化する上で重要です。
まとめ
契約業務の効率化やリスク低減、ナレッジの一元管理を目指すなら、契約ライフサイクル全体を見据えたCLM導入が効果的です。業務フローの整理や必要機能、セキュリティ、既存システムとの連携、費用対効果を意識して選ぶことで、更新漏れや属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上につながります。
「MNTSQ CLM」は、案件受付から契約締結までを一元管理し、AIによる分析でナレッジ活用を促進します。法務業務の品質向上やガバナンス強化にも貢献するため、契約業務の効率化とリスク管理を両立させたい企業に最適です。自社に合ったCLM導入を検討する際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


