雇用契約書の書き方完全ガイド|正しい作成手順と項目について解説

法務知識更新:2026.01.20

新しい従業員を採用するにあたって、発行・締結が必要なのが「雇用契約書」です。雇用契約書は、従業員の雇用条件や勤務内容を明示した契約書で、労働基準法に基づいて法的な効力を持ちます。

今回は、これから雇用契約書を作成する労務担当者向けに、雇用契約書の正しい書き方を解説します。労働基準法に基づく必須項目から、正社員・パート・有期雇用それぞれの記載ポイント、作成時の注意点までわかりやすく紹介するため、ぜひ参考にしてください。

目次

    雇用契約書とは?

    雇用契約書とは、企業と従業員が労働条件について合意した内容を明文化した契約書のことです。雇用形態・勤務時間・給与・休日など、労働に関する基本条件を双方が確認・署名した上で成立します。雇用契約書は契約上・業務上のトラブルの防止や法的証拠として重要な書類であり、企業は労働基準法第15条に基づいて、雇用時の労働条件を明示する義務があります。

    労働条件通知書との違い

    労働条件通知書は、雇用契約を締結する際に企業が従業員へ労働条件を通知するための文書です。こちらの文書も雇用契約書と同様に書面または電磁的方法での発行が義務付けられていますが、雇用契約書は双方が署名・押印して契約の成立を証明する書類であるのに対して、労働条件通知書は企業が一方的に労働条件を明示するという点で異なります。

    雇用契約書の法的効力

    雇用契約書には法的効力があり、雇用主と労働者は記載された契約内容に拘束されます。契約書に記載された条件が双方の合意のもとで署名・押印されていれば、トラブル発生時の重要な証拠として機能します。ただし、雇用契約書に記載された内容が労働基準法・労働協約・就業規則の内容に反するものであった場合は、その部分に対して労働基準法および労働協約の内容が優先されます。

    雇用契約書の書き方

    雇用契約書を作成する際は、正社員・有期雇用・短時間勤務の各雇用条件に応じた適切な項目を記載する必要があります。雇用契約書に記載する内容は、労働基準法で定められた必須項目(絶対的明示事項)と使用者がその内容について定めた場合に明示が義務空けられた任意項目(相対的明示事項)の2つに分かれます。

    1.雇用期間

    雇用期間は、全ての労働者の雇用契約書に対して必ず記載すべき項目です。契約の開始日・終了日を明確に記載し、契約期間の定めがない場合は「期間の定めなし」と明記しましょう。

    2.就業場所

    就業場所の項目には、従業員が勤務する事業所やオフィスの所在地を具体的に記載しましょう。リモートワークや出向の可能性がある場合は、「会社が指定する場所」という表現を用いることもあります。複数の拠点を持つ企業の雇用契約書では、転勤の有無や勤務地の変更条件なども明示する必要があります。

    3.業務内容

    業務内容は、従業員が担当する主な職務内容や責任範囲などを示す項目です。職種名だけでなく、具体的な業務内容を明確に記載しましょう。また、業務上の変更が生じる可能性を考慮し、「会社の指示により変更することがある」といった文言で補足するケースもあります。

    4.勤務時間・休憩

    勤務時間の欄には、始業・終業時刻と1日の所定労働時間、休憩時間を具体的に記載します。変形労働時間制やシフト制を採用している場合は、その運用ルールも明記しましょう。休憩時間は、労働基準法で定められた基準を満たしている必要があります。

    5.休日

    休日の欄は、週休2日制・完全週休2日制など、自社の就業規則に則った形で記載します。年末年始・夏季休暇などの特別な休日がある場合は、別途明記する必要があります。また、変形労働時間制を採用する場合は、休日の取り扱い方もあわせて記載しましょう。

    6.所定外労働

    所定外労働は、所定の労働時間を超えた残業(時間外労働)を指します。所定外労働が発生する可能性がある場合は、「業務上の必要がある場合、所定労働時間を超えて勤務を命じることがある」などと明記しておきましょう。なお、所定外労働は、36協定(時間外・休日労働に関する協定)の範囲内で行う必要があります。

    7.休暇

    休暇の欄には、年次有給休暇のほか、慶弔・育児・介護などに関する特別休暇についても記載が必要です。取得条件・付与日数・繰越ルールなども具体的に明記しましょう。

    8.賃金

    賃金の項目には、賃金の支給形態・支払日・支払方法などを正確に記載する必要があります。基本給・各手当・賞与・交通費の有無なども明示し、昇給制度がある場合はその基準や時期も明記しましょう。

    9.退職に関する事項

    退職に関する項目では、自己都合・会社都合の両ケースにおける退職手続きの方法や予告期間を明記します。自己都合退職における「退職の申し出は30日前までに行う」といったルールや、懲戒解雇・定年退職などの基準を記載しましょう。

    10.その他

    その他の項目には、守秘義務・会社設備や貸与品の利用ルール・副業禁止の有無など、就業に関する補足的な条件を記載します。業務遂行に関わる注意事項を明確にし、契約後のトラブルを防止しましょう。

    11.(短時間・有期雇用の場合)昇給

    短時間勤務や有期雇用の場合、就業中の昇給の有無は企業によって異なります。昇給がある場合はその基準や時期を具体的に記載し、昇給制度がない場合は「昇給なし」と明確に定めましょう。

    12.(短時間・有期雇用の場合)賞与

    短時間勤務や有期雇用の場合は、賞与の支給有無について別途記載する必要があります。賞与を支給する場合は支給時期や金額の決定方法などを具体的に記載し、支給しない場合は「支給なし」と記載しましょう。

    13.(短時間・有期雇用の場合)退職金

    短時間勤務や有期雇用の場合は、退職金制度の有無も契約時に明示しておく必要があります。有期雇用者や短時間勤務者に対して退職金を支給する義務はありませんが、社内規定で支給対象となる場合は、支給条件を記載しましょう。

    14.(有期雇用の場合)契約更新の有無

    有期雇用契約では、契約更新の有無を必ず記載しなければいけません。自動更新あり・更新なし・会社の判断によるなどと明示し、更新の際の手続き方法や通知時期についてもあわせて記載しましょう。また、契約更新回数に上限がある場合は、その回数と理由をあらかじめ記載する必要があります。

    15.(有期雇用の場合)契約更新の判断基準

    有期雇用契約では、契約更新を行うかどうかの判断基準も明記する必要があります。たとえば、勤務実績・能力・会社の経営状況など、更新判断に影響する要素を具体的に記載しましょう。また、無期雇用に転換される可能性がある場合は、転換後の労働条件も明示する必要があります。

    雇用契約書を書くときの注意点

    雇用契約書を作成する際は、法令・労働協約・就業規則との整合性を確認することが欠かせません。また、記載内容に抜け漏れがないように細心の注意が必要です。

    労働基準法・労働協約・就業規則の内容に抵触しない

    雇用契約書の内容は、労働基準法・労働協約・就業規則のそれぞれの内容に抵触しないように作成する必要があります。雇用契約書上でこれらの法令や規則よりも不利な条件を記載した場合、その条項は無効または有利な条件が優先されきます。特に労働時間や割増賃金など、法定基準に関わる項目は慎重に確認しましょう。

    必要な内容が記載されているか確認する

    雇用契約書には、労働基準法で定められた必須項目(絶対的明示事項)があります。雇用期間・就業場所・賃金・休日・勤務時間など、必須項目に漏れがないかを必ず確認しましょう。特に有期雇用の場合、更新条件や契約終了時の取り扱いについても明示が必要です。

    求人内容に即した内容にする

    求人情報と雇用契約書の内容が一致していない場合、採用後のトラブルにつながるおそれがあります。求人票に記載した条件と雇用契約書の内容を照らし合わせて、給与額・勤務時間・休日に差異がないようにしましょう。

    必ず一人ひとりに合わせて作成する

    雇用契約書はテンプレートを使用して作成できますが、全ての従業員に対して同じ内容を適用したり、前回締結した契約書をそのままコピーして発行したりするのは好ましくありません。作成時は必ず一人ひとりに合わせて記載内容を調整し、内容に問題がないかチェックすることが重要です。

    雇用契約書を変更・再締結したい場合

    従業員の雇用後に雇用条件の変更が生じた場合は、雇用契約書を変更する必要があります。ただし、雇用契約書を変更・再発行したい場合は、雇用主と従業員の双方の同意が必要です。雇用側が従業員の同意を得ず、一方的に雇用条件を変更することは違法にあたります。雇用契約書を再締結したら、必ず雇用主と従業員が1通ずつ書面で保管しましょう。

    まとめ

    雇用契約書は、企業と従業員の雇用関係を築く上で欠かせない法的文書です。契約内容に不備があると思わぬトラブルや法令違反のリスクにつながるため、必ず労働基準法に基づいて適切に作成しましょう。

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