<参加者>
グループリスク管理統括部 法務部 グループ法務推進課 担当課長 鈴木 亮平様
グループリスク管理統括部 法務部 事業法務課 小野塚 弘平様
MNTSQ カスタマーサクセス担当 下川 拓哉
※以下、敬称略
※2026年4月時点の役職です
AI活用を個人任せにしないため「法務部AIチーム」を新設
MNTSQ 下川:
貴社の法務部の皆様は、日々の業務でかなりAIを活用されていると伺いました。

鈴木:
そうかもしれません。最近だと、私はメールで返信する時、ほとんど音声入力と文面生成機能の組み合わせで完結させています。MNTSQさんからいただいたメールも多くは自動生成の文章を使って返信しています。たとえば、音声で「了解、ありがとう」と入力しただけで、過去のやり取りを踏まえたとても丁寧な文章が生成されるんです。
MNTSQ 下川:
本当ですか?そのようなシンプルな入力で、あれだけ丁寧な文章ができあがるんですね。
鈴木:
驚きですよね。
小野塚:
だから鈴木さんはあんなに効率的なんですね。毎回すごく丁寧な返信をされていると思っていたのですが、AI生成の文面だとは私も気づきませんでした。
MNTSQ 下川:
日常業務に、自然にAIが組み込まれているんですね。法務部全体では、どのようにAI活用を推進されているのでしょうか。
鈴木:
活用推進の第一歩として、「法務部AIチーム」を立ち上げました。私と小野塚は、そのメンバーです。
私や小野塚などはAIを積極的に使っていますが、法務部全体を見渡すと、皆が同じように活用できているとはいえない状態でした。
使っていない側は気づきにくいかもしれないのですが、AIを使う人と使わない人とでは、業務効率にはっきり差が開きつつある。他のメンバーは現状維持のままで、効率化できたメンバーには新しい業務がどんどんアサインされる。AIを活用できているメンバーは、いまや従来と比較にならないほど多くの業務量をこなす状況になっています。
法務部全員の業務効率化を目指すことはもちろん、そういった特定のメンバーに負荷がかかる状況を解消するためにも、全員がAI活用できる体制をつくろうと決めました。まず着手したのは、法務の業務をできるだけ細かい単位まで分解して、「この作業には、このAIを使ったほうがいい」と、業務ごとに整理していく作業です。MNTSQのAIエージェントも含めて、どの工程でどのツールを使うかを分析しています。
MNTSQ 下川:
その「業務を分解して、AIツールを当てて、使ってみて見直す」という手法は、どのような経緯で採用されたのですか。

小野塚:
自然発生的に出てきたアイデアです。AIツールがいろいろある中で「この作業には、このAIが向いている」という何となくの感覚は各自にあったのですが、組織として標準化はできていなかったのです。
鈴木:
たとえば、Copilotが好きな人もいれば、私のようなGemini派の人間もいて、各個人で自由に使い分けていました。でも、それだとAI活用が個人に閉じてしまい、組織全体の活用には至らない。
法務部の誰もがスムーズにAI活用できるよう、業務の棚卸しを進めつつ、各工程にフィットするAIツールを模索しています。
MNTSQ 下川:
業務を細分化して、それぞれに合ったAIを割り当てる。かなり実践的な取り組みですね。具体的には、どのように整理されているのですか。
小野塚:
まず自分たちの業務を分解し、全てひとつの表に落とし込みます。
いまは特に、契約レビューに絞って整理しています。例えば、MNTSQに案件が届いてからの確認、ヒアリング前に何を聞くかといった事前検討、依頼部門とのヒアリングの設定、ヒアリング後の記録づくり、契約書案等の作成、法務回答、そして相手方から返ってくるカウンターへの対応等。この一連の流れにおける各作業を細かく書き出していきます。
そして、書き出した各工程に「使えそうなAIは何か」を割り当てて、推奨プロンプトの検討等も含め「そのAIをどのように使うのがいいか」を考えていきます。チームには積極的にAIを活用する若手メンバーも多く在籍しており、彼らとも意見交換しながら作っています。
メンバー間で実際に使いながら、この工程はMNTSQのAIエージェントがいい、ここはGeminiをこのように使った方がいいと、工程ごとの最適解を探っている段階です。
MNTSQ 下川:
工程まで分解すると、ツールの向き不向きもはっきり見えてきそうです。
小野塚:
そうですね。一方で、「まだ足りないものがあるな」という工程も見えてきます。そこは今後の検討課題です。
もう一つ気づいたのは、AIでやりましょうと決めても、人がやったほうが早い業務もあるということです。そこを無理に自動化しても、結局誰も使ってくれません。ですから、いまのところは「ここは人がやりましょう」という判断も含めて整理しています。
MNTSQ 下川:
ツールを割り当てるだけでなく、「人がやる」という選択肢も残しているのは、運用として現実的ですね。
AIツールの性能は、使う側のスキルに左右される
小野塚:
AI活用を推進するにあたって、ただ単にAIを使うよう言うだけでなく、その具体的な使用場面や推奨プロンプト等も併せて組織に展開することが重要だと考えています。指示する側の人間によって、引き出せる性能にばらつきが出るからです。
プロンプトに問題があるのに「得たい回答が返ってこなかった」「やっぱりAIはまだ使えない」と思ってしまうメンバーがどうしても出てきます。そこに対しては、活用例や良いアウトプットを引き出せたプロンプトを共有して、一定の水準を保って使ってもらえるよう地道に体制を整えていくしかないと思っています。
一人ひとりが努力して、自分だけがAIを活用できるようになってもダメなんです。先ほど鈴木からもお話ししましたが、一部のメンバーが効率よく業務をこなせるようになった結果、そのメンバーだけ負荷が増えてしまうのは、法務部のあり方として健全ではありませんよね。全員がスキルを高めて業務効率化し、良い状態で働けるようにしたいですね。
鈴木:
先日、国内最大規模のAI特化型イベント「AI博覧会」に参加してきました。イベント内で開催された「AIによる業務改善」をテーマとした講演で「まずやるべきは、業務の分解と、それに適用するAIツールの選定だ」と説明されていました。それを聞いて、自分たちの方向性は間違っていなかったと自信を持てました。その他の講演でも、私たちがまだ手をつけられていない領域の業務改善やAI活用の話も聞けたので、そちらもぜひ社内に還元していきたいです。

MNTSQ 下川:
さまざまなAIを活用されるなかで、MNTSQの業務面での使いやすさについてはいかがでしょうか。
小野塚:
AIチームが立ち上がったのは今年に入ってからで、MNTSQの導入はそれよりも前の話ではありますが、業務を分解していくと「この工程はMNTSQに委ねたほうがいい」というケースがいくつも出てきています。そこは他のシステムに取って代わられる機能ではないので、引き続き活用していきたいですね。
AI活用を全法務部員の目標設定に追加
MNTSQ 下川:
個人の努力に任せず全員を巻き込むために、何か仕組み化されていることはありますか。
鈴木:
全法務部員が、評価対象となる目標管理の1項目として「AIの活用」を設定しました。AI活用に取り組めば取り組むほど、人事評価にも反映できるような仕組みにしています。
小野塚:
上層部の方針としても「AIをもっと活用していこう」という流れがあり、このようなことも実現できました。
AIを活用したうえで、法務として本当に注力すべき仕事は何なのか、そこまで含めて検討が進んでいるので、チームとしても動きやすくなっています。私たちスタッフレベルだけで動いているのではなく、上からの後押しもある。この環境要因は大きいですね。
契約書レビューの効率化をAIで実現する

MNTSQ 下川:
ルールの整備も含めて着実に取り組みを進められているのですね。AIチームの発足以外に、いま法務部で取り組まれていることはありますか。
小野塚:
MNTSQの「AI契約アシスタント」を活用するための準備ですね。法務部メンバーの多くがとても期待しています。
MNTSQを導入した目的の一つは、「MNTSQ CLM」による事業部の業務効率化でした。導入から数カ月しか経っていない現時点では、その効果はまだ限定的です。数年かけてナレッジが積み重なれば、事業部も自ら「過去にこういう案件があったな」と辿れるようになって効率化されていくはずですが、いまはそこまでではありません。
即効性のある事業部向けの効率化策となると、やはりAI契約アシスタントが鍵だと考えています。当社の契約書式に対する修正案をAI契約アシスタントがきちんとレビューできて、事業部への回答が満足のいく内容になっていると確認できれば、すぐにでも本格導入したい。
ただ、当社の契約書式は少し特殊な形式であることもあって、まだうまく読み取れない部分もあります。読み取り精度を上げるためのプロンプトのご提案もいただいているので、細かい調整を重ねながら、できるだけ早めに使える状態にしたいと考えています。
業務効率化の先に目指す、現場との密な連携
MNTSQ 下川:
最後に、法務部として業務効率化に取り組んだその先に見据えている展望についてお聞かせいただけますか。

鈴木:
今まであまり手をつけられていなかった「攻め」の法務にも踏み込める体制を整えたいですね。
事業部からの依頼を待つのではなく、こちらから積極的に事業へ関わっていきたいと考えています。たとえば、各カンパニーに法務担当を配置する、などです。事業部側の構成メンバーとして、事業への深い理解と事業推進マインドを持った法務メンバーがいれば、事業構想の初期段階から法的リスクの整理・検討を行うことができ、スムーズな事業の立ち上げや推進に寄与できるようになると想定しています。
小野塚:
事業部側にもっと入っていきたいという考えは私も同じで、色々と取り組みを始めています。以前勤めていた会社では、営業職を経てから法務に移ったので、事業をしっかり理解したうえで業務を進められていました。当社に転職したばかりのころは、事業を理解したくても法務部の仕事が多く時間がとりづらい状況が続いていました。若手や中途採用者が多い現在の当社法務部において、AIで創出した時間を事業理解のための取り組みに充てていくことが不可欠だと感じています。
鈴木:
小野塚はもともと営業出身で、法務部員としては珍しく事業部側に入り込んでいくタイプです。直近は現場に直接足を運んだり、事業部と調整して勉強会を開催してくれたりしています。
小野塚:
昨年は勉強会を2回開催したのですが、まだスポット的な取り組みでした。
当社の場合はカンパニーが5つあり、一つ一つの事業規模も大きいなかで、スポットで勉強会を実施しても、人も事業も常に変わっていくので、インプットのスピードが追いつかないんですよね。
もっと事業部と密にコミュニケーションを取り、法務部との距離を近づける方法はないかと考えました。そこで、相談しやすい環境をつくるために、距離感が近いと感じられるような対面での相談窓口を設けようという話が出ています。当社は法務部と事業部でフロアが分かれているので、法務部側が定期的に事業部側のフロアに行って仕事をしてはどうかというアイデアも出ています。いろいろと手段を模索しながら、事業部との相互理解を深めていきたいですね。
MNTSQ 下川:
AIツール導入による効率化はゴールではなく、法務部が事業部とさらに深く関わっていくための手段なのだと改めて認識できました。皆さまのAIチームとしての取り組みは、多くの法務部さまにとって道しるべになると思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
なお、荏原製作所様がMNTSQ CLMを導入し、全社展開と効率化を実現した経緯は、導入事例インタビューで詳しくお伝えしています。あわせてご覧ください。


