長島・大野・常松法律事務所とMNTSQが明かす、8億円出資に秘められた「創業秘話」とは

インタビュー更新:2025.03.03

目次

    AIによる契約業務のDXに取り組むリーガルテック企業「MNTSQ(モンテスキュー)」。

    創業者である板谷隆平は、日本を代表する法律事務所の一つ、長島・大野・常松法律事務所(以下、NO&T)の弁護士として、企業法務の最前線で活躍してきました。

    NO&Tには長年蓄積された契約書作成のノウハウや、法的リスクを回避するための「ベスト・プラクティス」が存在します。その知見をテクノロジーの力で広く届けたいという想いから、2019年にMNTSQを創業しました。

    そして、NO&Tはこの挑戦に8億円という異例の大型出資を決断します。法律事務所がスタートアップ企業に出資すること自体が珍しく、その金額も法務テック企業への出資としては前例のない規模でした。

    なぜNO&Tはこの決断に至ったのでしょうか。今回は、MNTSQ代表の板谷と、当時の担当パートナーであり、現在NO&Tのマネージング・パートナーを務める藤原総一郎氏をお招きし、創業

    の経緯から法務の未来像まで、お二人にじっくりとお話を伺いました。

    板谷 隆平
    MNTSQ株式会社 Founder / CEO
    2013年東京大学法学部卒業。在学中に司法試験予備試験に合格し、2014年に弁護士登録。同年に長島・大野・常松法律事務所(NO&T)へ入所後、企業買収(M&A)、AI/IT等のテクノロジー関係のアドバイスに従事。同事務所で勤務する傍ら、MNTSQを創業。
    藤原 総一郎
    長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー
    1996年東京大学法学部卒業。1998年第一東京弁護士会登録。2003年Columbia Law School卒業(LL.M)。2003年〜2004年にサンフランシスコのMorrison & Foerster LLPにて勤務。2006年より長島・大野・常松法律事務所パートナー、2024年より同事務所マネージング・パートナー。2019年〜2024年MNTSQ株式会社社外取締役、2024年より同社監査役。企業買収(M&A)取引及びテクノロジー関係取引を中心に、企業法務全般に関するアドバイスを提供している。

    ◾️インターネットに夢中だった学生時代、藤原先生の知られざる原点とは

    ——MNTSQの創業時、NO&Tから「8億円の大型出資」をいただいたという話は、さまざまなところで耳にします。

    しかし、「なぜそんな巨額の出資を受けられたのか」「板谷さんと藤原先生の関係」などについて、深く掘り下げた記事はありませんでした。

    そこで今回は「MNTSQ創業物語」と題して、創業に至る経緯からお二人の想いまで、じっくりとお話をお伺いします。

    ではまず、お二人はなぜ法学部、そして弁護士という道を選ばれたのか、というお話からお伺いしていきたいと思います。

    板谷:
    MNTSQ代表の板谷です。愛知県で公立の小学校、中学校、高校と進学し、その後東京大学に入りました。
    東京大学法学部では法哲学を専攻しました。僕は本当に人間が好きで、人や世界への理解をより深めたいという思いから法学部を選びました。

    でもやはり法哲学だけでは食べていけなくて、弁護士の道へ。大学在学中に4ヶ月ほど猛烈に勉強をして、司法試験の予備試験に合格し、弁護士になりました。

    藤原:
    私は学生時代、最初はテニスばかりしていて、正直、勉強はあまりしていなかったのですが、ある日テニスボールが目に当たってしまい、網膜剥離になってしまったんですよね。

    それで入院して手術して、医師から「しばらく運動はできません」と告げられて。「それなら、勉強でもするか」という感じで司法試験の勉強を始めました。

    ——板谷さんも藤原先生も、最初から弁護士になるつもりで法学部に入られた訳ではなかったのですね。

    板谷:
    そうですね。弁護士になろうと思ったのは、弁護士は一番多くの能力が求められるハードな職業だと思ったからです。専門性だけじゃなくて、事業への理解力や人間力、交渉力、語学力まで必要とされる。さらに経営者的な要素も問われる。そういう、いろんなものが求められる、逃げ道のない場所で自分を試してみようと思ったんです。

    藤原:
    私の場合は「一番好きなことは仕事にしない方がいい」という考えからでした。本当は中学生の頃から理系が得意で、プログラミングに夢中になるほどコンピュータが大好きだったんです。でも「好きなものを仕事にするとつまらなくなるんじゃないか」と思って。

    法学部を選んだのは、そこにさまざまな選択肢があると感じたからです。弁護士になろうと思ったのも、法律という専門性を通じて、多くのことができるはずという想いがありました。

    その後、入所する事務所を探していた時、面白い気づきがありました。
    ある法律事務所を訪問した際に「藤原くん、インターネットが好きなんだって?」「この判例データベースに『インターネット』って入力すると何件ヒットすると思う?」と聞かれたんです。答えはゼロ。結局、新しいことが紛争になり、裁判になって判例になるまでには長い時間がかかるので、裁判だけをやっていても最新のビジネスに触れる機会はなかなか来ないんだな、と実感しました。

    それがきっかけで、裁判に至る前のビジネスが始まる段階でテクノロジー関連の仕事ができる場所を探すようになり、NO&Tの前身である長島・大野法律事務所に入ることになりました。1998年頃のことですが、当時としては珍しかったと思います。そこから、IT関係の案件を多く手がけることができました。

    板谷:
    一緒に働いていた時に、実は藤原さんがテックをお好きだと聞いていて。「司法修習のときに自分でホームページを作っていた」という話は、藤原さんらしくて印象的でしたね。

    藤原:
    もともと中学生の頃からBASIC(プログラミング言語の一つ)で遊んでいましたし、数学も好きでした。その後、司法試験に合格したタイミングでWindows 95が登場し、「インターネットとかいうのが始まったぞ!」と。私はホリエモンと同世代ですから。

    そこで一生懸命モデム(電話回線でインターネットに接続する機器)を使ってインターネットに接続して、テキストエディタでHTMLを書いたり、CGI(ウェブサイトで動的なコンテンツを作るためのプログラム)なども組んだりしながら、試行錯誤でホームページを作ったりしてましたね。インターネットの可能性にワクワクしたことを今でも覚えています。

    板谷:
    そうそう!僕は藤原さんのこの話が一番好きなんです!(笑)

    ——その後、板谷さんは大学を卒業後にNO&Tに入所され、藤原先生との出会いがあったのですね。

    板谷:
    そうです。NO&Tでの毎日は本当に刺激的でしたね。
    僕は「弁護士の仕事がつまらないから起業しよう」と思ったタイプではなく、今でも弁護士としての仕事はとても楽しいと思っています。

    藤原さんと一緒に仕事をしていて、自然と敬意を感じていました。藤原さんは視野の広さが全然違います。依頼者へのアウトプットを、僕が自分なりに考え抜いて、「これでベストだろう」と藤原さんに見てもらうと、藤原さんはそこからさらに良くなるポイントを必ず見つけるんです。

    藤原:
    板谷さんとは、ずっと同じグループで働いていましたし、時々フットサルも一緒にしていましたね。

    ◾️世の中の契約書には「穴」が存在している

    ——NO&Tでお仕事をされるなかで、板谷さんはどんなことを考えられていましたか?

    板谷:
    NO&Tは、日本の「四大法律事務所」の一角で、偉大な先人弁護士が50年以上も最高のクオリティのリーガルサービスを提供してきた場所です。日本で初めて所属弁護士が100名を超えた超大規模事務所でもあります。

    入所前は正直、海外ドラマ「SUITS」のような、権謀術数の渦巻く場所をイメージしていたんです。でも実際に入ってみると、全員がただ純粋に「最高のクオリティ」を追求している。そのひたむきさに感銘を受けました。

    特に印象的だったのが、NO&Tには「フェアな契約はここが落としどころだ」という長年の知恵の蓄積があることです。僕たちはこれを「ベスト・プラクティス」と呼んでいます。NO&Tの弁護士は、この暗黙知を先輩から引き継いで、目を凝らして契約書のアンフェアな「穴」を塞いでいくことができる。

    その圧倒的な質の高さに日々刺激を受けていた一方で、年次が上がるにつれて同時にある種の”もったいなさ”も感じるようになりました。

    ——”もったいなさ”とは、具体的にどういったことでしょうか。

    板谷:
    フェアな契約を享受できるのが、ごく一部の企業に限られるということです。

    実は世の中のほとんどの契約書には「穴」が存在しているんです。自分が助けられない場所で「ああ、この人も騙されてしまっているな…」と無力感を感じてきました。

    例えば、アンフェアにリスクを負わされているのに、それが認識すらされていない。逆にリスクを怖がりすぎて、無駄な交渉によって肝心のビジネスが遅くなってしまうことも多いです。

    NO&Tの「ベスト・プラクティス」は、まさにそうした穴を埋め、フェアな取引を実現するための知恵の結晶です。この知見がもっと広く社会に届けられれば、誰も騙されずに、しかもあらゆるビジネスが高速化するのではないか——。そんな問題意識を持ち始めたんです。

    藤原:
    私も同じような問題意識を持っていました。人間一人ができることには限界がある。その解決には、テクノロジーの活用が重要だと常々感じていたんです。

    でもテクノロジーは、人間の手作業より圧倒的に優れている部分もあれば、まったくできない部分もある。そこの使い分けをうまく行うことで、私たちの知見をもっと広く社会に還元できるんじゃないかと思っていました。

    それこそ、板谷さんが起業するずっと前に、テクノロジーを使って自分で何かできないかと、ちょっと考えてみたことがあるんです。しかし当時の私の友人には、液晶ディスプレイやビデオカメラや飛行機のエンジンなど、物理的なモノの開発に携わるエンジニアしかいなかった。優秀なソフトウェアエンジニアとの出会いもありませんでした。だから「実現させることは難しいかな…」と、それ以上は深く考えずにそのまま放置していたんです。

    でも、いずれ私たちの仕事の一部は機械が担うようになるだろう、という予感はありましたね。私も板谷さんのように、安野さんみたいな優秀なエンジニアとの出会いがあれば、板谷さんと同じ道を選んでいたかもしれません。

    ◾️安野さんとの出会い、そして大型出資の裏側とは

    ——いまお話に出てきた「安野さん」は、2024年の都知事選挙にも出馬して話題になった、SF作家でありAIエンジニアでもある安野たかひろさんですね。

    板谷さんは安野さんと共にMNTSQを共同創業されましたが、もともとお二人の出会いはどのようなものだったのでしょうか。

    板谷:
    安野との出会いは、僕にとって本当に大きな転機でしたね。

    きっかけは、大学時代に「東大にはどんな面白い人がいるんだろう」と思って開いた交流会です。そこで安野と出会い、意気投合して、卒業後も親交が続いていました。

    ある日、安野の自宅で話し込んでいて、帰りの深夜3時頃のエレベーターの中でふと、AIとリーガルテックについて話してみたんです。すると安野も「それ、俺も考えてた!」と。
    安野は自然言語処理の専門家で、以前から「社会で重要な役割を担う言語とは何か」を思案していました。そして、それは法律であり、契約書なのではないかと。「人間が約束して社会を成り立たせていく」、この営みをAIで解析することに大きな可能性を感じていたんです。

    この偶然の一致がきっかけとなって、私たちの友人も加わり、AIとリーガルテックの具体的な取り組みが始まりました。まずは僕がアンフェアな条項のサンプルを100個ほど作成し、それを安野がAIに学習させてみました。すると、当時のAIにそこまでの処理は難しいと思われていましたが、予想以上の精度が出たんです。

    これは本当に可能性がある。そう確信し、1年ほど準備を進めていきました。

    ——その段階ではまだ、藤原先生には内緒で?

    板谷:
    もちろん内緒で、こっそりと…。

    藤原:
    板谷さんが特定のタイミングで必ず席を立ち、どこかへいなくなるので、当時の事務所内では話題になっていましたね(笑)。あいつなにかやっているな、なにやってるんだろう、とみんなで不思議がっていましたよ。

    板谷:
    安野たちとデータの学習や分析をしていましたね。悪いことはしていないです(笑)。

    ——そこから藤原先生に相談されたのは、いつ頃だったのでしょうか?

    板谷:
    成果が出てきて、これは本気で取り組むべきだと確信したタイミングです。
    でも、正直すごく緊張しました。藤原さんは当時グループ代表で、本当にお世話になっていたので。

    「藤原さん、人生相談させてください」、と切り出しました。

    これからリーガルの世界がAIによって変わるかもしれない、実は安野という優秀なエンジニアと一緒に取り組んでいることがあって、既にこういう成果が出ている。起業の可能性も考えて相談させてください——。
    そう話したんです。

    ——それを初めて聞いたとき、藤原先生はどうでしたか?

    藤原:
    震えましたね。
    私自身が以前から持っていた構想だったことに加えて、難しいと諦めていたことを、板谷さんは優秀なエンジニアと一緒に実現しようとしている。聞いた瞬間に価値が分かりましたよ。かなり驚きました。正直、そんなことを考える人は他にいないと思っていましたから。

    驚きと同時に喜びもありましたね。「そうか、こういう世代じゃないとできないんだな」と思いましたし、「これは来た」と。絶対にやらなければいけないと直感しました。
    あと、こういうのはメンバーが重要だと思うのですが、僕は安野さんのことを知らなかったけれど、経歴を見たら「この人なら大丈夫だな」と思って。

    そこから、「どうやったら実現できるか」、ということを一緒に考えました。

    ——そこから8億円という大型出資やNO&Tのノウハウ提供に至ったわけですが、そう簡単な決断ではなかったと思います。

    最初から大型出資をしてくださった理由は、どこにあったのでしょうか?

    藤原:
    確かにギャンブル的な面もあった気もしますが、何となく正しい判断だという自信はありましたし、トライすることに大きな価値があるので、最終的に失敗しても構わないと思っていました。

    また、スタートアップの製品開発には相応の資金が必要です。資金調達に奔走する時間があるなら、製品開発に集中してほしい、そういう思いもありました。

    板谷:
    起業家として本当に有難い話ですが、実際にそう言って出資してくださる方はなかなかいません。リーガルテックへの出資として8億円というのは、かなり大きな金額でしたよね。

    藤原:
    そうですね。これはスタートアップ出資という以上に、「法務業界にテクノロジーがもたらす変革の波に、私たちがどう向き合うか」、という戦略的判断でもあったんです。

    短期的にはリーガルテックを使う事務所間の競争が起こり、中期的にはプラットフォームが形成される。そこで主導権を握れなければ、たとえばGoogleのような巨大テック企業が参入してくる可能性もある。ゆっくりやっている場合ではないと考えていました。

    でも、自分たちで開発するとなるとさらにお金がかかる。それなら、こういう形で進める方が正しいんじゃないかと。そういう理由から、当時も決して過大な出資だとは思っていませんでした。

    ——スタートアップのようなできたばかりの会社への巨額出資について、NO&Tの皆さんの反応はいかがでしたか?

    藤原:
    NO&Tは多くパートナーが在籍しますが、反対するパートナーはほぼいませんでしたね。AIなどの技術革新が進む中、競争に取り残されるリスクは皆理解していました。競合の動きを見ても、ここでこういう取組を行うべきタイミングだと感じていたと思います。

    単なるスタートアップ出資ではなく、法務業界にテクノロジーがもたらすインパクトという大きな流れに自分たちがどういうスタンスで臨むかと考えると、出資額も妥当だと理解されましたし、あまり疑問も持たれなかったですね。

    それに、やや手前味噌ですが、私自身が長らく事務所のITの担当者・責任者として事務所内で一定の信頼を得ていたことに加えて、杉本(当時のNO&Tのマネージングパートナー)が、強力にサポートしてくれたのも大きかったと思います。

    板谷:
    僕のこの6年間での最善の意思決定は、最初に藤原さんに相談しようと決めたことかもしれません(笑)。

    当時のリーガルテック領域としては最大級の出資だったと思いますし、全国の弁護士に同じ相談をしても、これだけの支援をくださる人にはそう出会えないと思います。

    ◾️法務が「価値ある判断」に集中できる世界へ

    ——法務業界は今後、AIなどにより進化をしていくと思いますが、現在のリーガルテックについて、お二人はどのように感じておられますか?

    藤原:
    正直、まだまだこれからだと思います。AIが法務の世界を変える、というところまでは、まだ始まっていないかなと。

    ただMNTSQが、これまで個人の職人芸だった知見を、組織の知恵として共有できる仕組みを作ったことは、大きな革新だと考えています。でもそれ自体はAIそのものによる変革ではなく、その一歩手前の段階で。次のステップとして、いよいよAIがリーガルを本質的に変える段階になっていくはずです。

    板谷:
    AIは確かに強力なツールです。でも、AIはどう使うかのほうが重要で、特に法務の世界でうまく使うためには多くのポイントを押さえる必要があります。

    ——人間の仕事はなくならない方がよいのか、なくした方がよいのか、で言うとどうでしょう。

    板谷:
    なくならないと思うし、なくなる必要もないと思っています。

    AIというのは統計的な技術ですので、一般的な解を出すのは得意です。しかし、現実のビジネスの現場には非常に複雑な文脈が存在しています。

    そのため、依頼者の具体的なニーズを引き出していくと、「一般的にはこうかもしれないが、この案件ではこうすべき」という特殊解に行きつきます。

    その特殊解の積み重ねの先に、その事業の差別化や価値があるのではないかと。AIには理解できない人間社会の文脈を読み解いて、価値を生み出す営みがある限り、人間の仕事はなくならないだろうと思います。

    藤原:
    今のAIの延長線上ではそうですよね。もちろん、それすら乗り越えるような真のスーパーAIが進化して、その特殊解までもAIが導き出すようになるかもしれないですが、でもそれも今はまだわかりません。

    AIやデジタル化で仕事が減ると言われながら、今のところ、実際には法務も弁護士も全然人手が足りていないんです。結局、人間にしかできない仕事は減っていない。いずれAIがそれを超えるのかもしれませんが、少なくとも今はまだその段階ではないと思っています。

    ——最後に、お二人が考える、法務や契約業務の未来についてお聞かせいただけますか?

    板谷:
    これからの法務は、単なる知識を持っているだけの「生き字引き」的な存在ではなく、その知識をいかにビジネスに活かせるかを考える存在になっていくと思います。そんな法務部が重宝されると思いますし、弁護士もそういう部分で勝負してきたのかなと。

    そうなると法務部も、事業部門と緊密にコラボレーションして、ときにはリスクテイクを促しながら一緒にビジネスを作っていく存在になっていけると良いですよね。そのためにも、定型的な業務や情報収集は、できる限りテクノロジーの力で効率化したいと考えています。

    藤原:
    そうですね。弁護士の業務も、定型的な部分はテクノロジーで素早く解決していきたい。そこは全く同感です。

    ——これから未来へ向けて、MNTSQはどんなことをどんなふうにやっていくのでしょうか。

    板谷:
    これからMNTSQがやりたいことというのは「3つのステップ」があると思っています。

    まず第一に、法務のナレッジを組織の資産として再構築すること。法律事務所から法務部へ、法務部から事業部へ、知見を確実に移転していく。

    次に、その知見を事業部門が直接活用できるようにすること。法務担当者という「人」を経由しなくても、定型的な案件であれば自律的に交渉できる世界を作る。事業部門がリスクに怯えなくても、自信を持って前に進める世界を作りたい。

    そして最後は、もっと大きな夢があります。
    会社間の交渉・合意プロセスそのものをAIで効率化する。政府や個人も巻き込んだかたちで社会インフラを作り、AIがお互いにとって妥当な落としどころを提案して、フェアな契約がスムーズに締結される。そんな世界を目指しています。

    藤原:
    交渉エージェントとしてのAI活用は、確かに効率性の面で大きな可能性を持っています。ただ「これが欲しい」という本質的なニーズは、やはり人間にしか理解できないところがある。そこは変わらないでしょう。

    むしろAIの役割は「何が普通か」を示すこと。標準的な解を提示することで、そこからの調整や交渉がしやすくなる。特に重要な案件ほど、人間の判断が必要になってくるはずです。

    板谷:
    そうですね。「法務部から事業部に知見を移転する」とは言いましたが、逆に「この案件はリスクが高いので法務部や外部弁護士が関与すべき」というアラートも出せるようになるはず。これにより、会社全体のガバナンスを高めることができますし、法務人材が重要な案件によりフォーカスでき、その価値をより認められやすくできるでしょう。

    僕は「人類が最も進歩する場所で、最大限の力を発揮すること」が最大のモチベーションです。法や社会のあり方がAIでアップデートされる瞬間に立ち会えることにはワクワクしています。

    人類の進歩が加速するほど、難しい問題も増えますが、でもテクノロジーがそれを支え、人間は本当に価値のある仕事に集中できるようになる。

    それは法務の世界でも同じで、法務人材がより本質的な判断に集中し、事業の真のパートナーとして機能する世界を実現したい。それこそが、わたしたちMNTSQが目指す未来です。

    おわりに

    ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
    板谷と藤原先生によるMNTSQ創業物語、いかがだったでしょうか。
    今回の記事は、これまで公開されてきたMNTSQ創業インタビューの中で一番、お二人の熱量を等身大でお伝えできたものなのではないかと思っています。

    今回の記事のほか、このMNTSQのサービスサイトでは、MNTSQ CLMを導入された企業さまの事例集や、お役立ち資料なども公開しております。

    まずは製品の話を聞いてみたい、リーガルテックに関する一般的な相談をしたい、などもお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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